研究課題/領域番号 |
20K22137
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
古田 駿輔 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40879673)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 新制度派組織論 / 制度維持 / 歴史分析 / 制度的企業家 / 制度変革 / 歴史的組織研究 / 正統性 / 組織の存続 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、組織の長期的な存続と衰退を分けるプロセスについて、制度論的アプローチを 用いて理論的かつ実証的な解明を試みる。新制度派組織論における先行研究では、ある組織が制度化されれば、その組織は正統性を獲得し存続できることを前提として研究が行われてきた。本研究では、先行研究とは異なり、制度化と正統性のギャップに注目する。そして、組織の存続と衰退を分ける制度化と正統性のギャップが生成するプロセスと、そのギャップを克服するうえで、長期間存続している組織と組織を取り巻く主体(特に顧客)の関係について明らかにすることを研究目的としている。
|
研究実績の概要 |
理論的及び歴史分析を進めるにつれて、概念的な視座を正統性から制度維持へと変更しつつ進めている。主に①追加的な調査、②学会報告、③執筆の3軸で研究を行った。 ①追加調査:愛知県や高知県の酒蔵を訪れ、インタビュー調査を行った。インタビュー調査では、「名門」というコンセプトに着目し、組織としての酒蔵がどのように名門という位置づけを維持しながら存続しているのかについて追加的な調査を行った。調査結果としては、酒蔵はむやみに拡大志向を目指すのではなく、地元との関係を大切にしながら存続していることが明らかになった。 ②会報告:本年度は、経営哲学学会関東部会(6月・関東部会)とBritish Academy of Management(9月・マンチェスター大学)で学会報告を行った。経営哲学学会では、「制度維持メカニズムの探索」という報告タイトルで研究報告を行った。制度維持の理論的前提に重きを置きながら、制度維持のレビューも兼ねた学会報告を行い、制度維持の回帰メカニズムの提示を行った。British Academy of Managementでは、” Exploring the role of history in the institutional maintenance process: Case of the Godzilla movie in Japan”という報告タイトルで学会報告を行った。こちらは、制度維持の回帰メカニズムという理論モデルを提示した報告である。 ③執筆:書籍の分担執筆およびBAM2022conferenceのproceedingsを出すことができた。書籍の分担執筆では、「経営戦略ハンドブック」、「アントレプレナーシップの原理と展開」の第12章「アントレプレナーシップの制度化」の執筆である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、理論的な概念枠組み構築と定性的な実証研究(歴史分析)を並行して進めることができた。理論的な概念枠組みでは、これまでの研究成果の一つとして制度維持の回帰メカニズムを提示できた。また、国際学会で査読付きフルペーパーとして採択され、学会発表することができた。そして、追加的な調査として酒蔵に対するインタビュー調査を行い、制度維持は異質性を背景としていること、組織は制度を維持する際これまで活動してきた基盤やロジックを重視することも確認できた。さらに、書籍ではあるものの、『経営戦略ハンドブック』で制度戦略などを担当し、『アントレプレナーシップの原理と展開』では、「アントレプレナーシップの制度化」として、ドメインなどの概念を用いながら制度的企業家とステークホルダーの関係性構築について仮説的な命題を提示できた。これらの点を踏まえると、前年度よりはよりは概念的枠組みをクリアに構築できただけではなく、conference論文や学会発表、書籍として形にできているため、研究を前進させたといえるだろう。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、①歴史分析による回帰メカニズムの精緻化、②本格的な論文執筆作業を並行して進めていくことが必要である。①については、回帰メカニズムの精緻化について、精緻化のための歴史分析をする必要がある。研究分担者だけではなく、指導教員および学外の定性研究を専門としている研究者に助言を求めながら、さらに事例に検討を加え、より多面的に回帰メカニズムを精緻化していかなければならない。②に関してはまず事例の分析を通した制度維持の仮説拡張を目的とした論文や歴史分析による論文の執筆などを進めていかなければならない。基本的には博士論文の提出を目的として国内の学術雑誌を中心に投稿先の選定と論文の最終化を行う。なお、余裕があれば、海外学術雑誌についても検討することも考えている。
|