研究課題/領域番号 |
20K22176
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 (2022-2023) 小樽商科大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
森谷 亮太 中央大学, 法学部, 助教 (30881445)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 色盲観 / 色覚問題 / 学校色覚検査 / 障害学 / 学校保健学 / 軽度障害 / アクセシビリティ / 言説分析 / ライフストーリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1980年前後を強制的学校色覚検査撤廃運動期の始まりと捉え、その後2003年の学校保健法改正による選択的学校色覚検査の開始までの期間に着目し、色盲観が構築され、変遷した過程を詳細に明らかにすることを目的とする。これまで色盲観の変遷、特に強制的学校色覚検査撤廃運動期に着目した研究は非常に限られている。本研究は、学校色覚検査制度の転換期において、色盲の社会モデルがどのように構築され変遷したのかをライフストーリーの分析を通して再検証することで、これからの学校色覚検査の在り方を再検討するための土台となる貴重な研究蓄積となることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、先行研究が着目してこなかった強制的学校色覚撤廃運動期を色盲観の構造的変化が見られた重要な時期と考え、主にこの時期に学校色覚検査を経験した色覚異常当事者のライフストーリーや関連資料を収集し分析している。 本年度は本研究課題採択後4年目である。今年度は、これまで収集した資料の整理を中心に、新たな資料の収集と分析を並行した。色覚異常当事者のライフストーリーの語り、及び当事者の自伝や、関連する小説や作品なども収集対象として広く資料収集してきた。近年は、障害学や周辺領域での理論的蓄積が早い周期で見られるので、本研究の色覚問題分析から見えてきた視点が、今の障害学分野においてどのような位置付けとなり得るのかについて考察を進めているところである。 これまでの資料で明らかにしてきた当事者の学校色覚検査経験について、彼/彼女らの「打ち明けるようなことじゃない」ものという色盲観の構築過程について、今回新たに障害学、特に軽度障害を巡る理論的枠組み、およびインターセクショナリティの視点から、色覚問題の多層的障害経験について分析を進める方向性を検討している。このような視点から、本研究が着目する強制的学校色覚検査撤廃運動期について、色覚検査不合格者を色覚の欠損や異形成と捉える医学モデル的色盲観から、そのような色盲観の社会的構築性を指摘する社会モデル的色盲観へと転換する移行過程について、当事者の経験的語りから新たな視座を得られると考えている。 現在のところ、撤廃運動期はその後の選択的学校色覚検査期における色盲観との理論的関連性がみられる。これまでの研究では明らかにされていない撤廃運動期における色盲観の構築という新たな視点を示唆していると考えられる。また、このような視点は、よりよい学校色覚検査のあり方について、障害学の理論的枠組みから議論するための土台となる新たな視角を提起する可能性もあるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、主にこれまで収集したライフストーリーデータの整理と分析、および新たな資料の収集に取り組んだ。本年度で収集しきれなかった資料については、次年度も計画的に収集、整理、分析を継続していく予定である。並行して、次年度もオンラインを活用しライフストーリーインタビュー調査に協力してもらえる当事者の募集を継続しつつ、これまで収集した色覚異常当事者の語りの分析の一層の精緻化を中心に進めていく計画である。また、国内外の関連する研究成果については、障害学およびその周辺領域の理論的蓄積を中心に、継続してリサーチを進めつつ、研究成果の整理を進めていく計画である。本研究課題が採用している理論的枠組みについては、近年の新しい研究成果の蓄積などを受けて、継続的な収集と整理の必要性が高まりつつあることも感じている。今年度は、障害学や色覚異常問題を中心に、関連する分野における理論枠組みや分析視角の応用を試しつつ、色覚異常問題研究における新たな研究アプローチの検討も進めてきた。次年度は、これまで収集分析した資料の整理を進めつつ、これまでの研究成果をまとめることができるように適時柔軟に研究計画を見直すことで、これまでの計画の遅れを取り戻す計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでの感染症の拡大の影響とその後の社会の変化により、予定していた資料の収集や研究協力者の募集などが思うように進められなかった。次年度は、これまで以上に、オンラインを活用した資料の収集、および学外の関連団体を通じての協力者の募集を継続し、オンラインデータベースやウェブ会議システムを活用した聞き取り調査など、これまでのアプローチを踏まえつつ、柔軟に進めていく計画である。これまでの研究計画の遅れを取り戻せるよう工夫しつつ、当初の研究計画に沿ってより一層の分析の精緻化と、研究成果の報告とまとめに取り組む予定である。並行して、既に収集できた色覚異常当事者の語りについての整理と研究成果発表、および近年の周辺分野における理論的展開を踏まえ、新たな視角からの研究アプローチについても継続的に進め、次年度をより充実した研究成果を生み出すための時間として活用したい。関連する学会の年次大会等の多くはこれまで通りの開催手法に戻りつつあり、感染症拡大や社会情勢の変化などにも気を配りつつも、随時研究計画の進み具合に合わせ、研究成果の報告や情報収集などの機会として積極的に活用していく計画である。
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