研究課題/領域番号 |
20K22240
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
神内 聡 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (90880302)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スクールロイヤー / チームとしての学校 / いじめ / 保護者対応 / 組織内弁護士 / 多職種連携 / 子どもオンブズパーソン / 子どもコミッショナー / オンブズパーソン / 組織内弁護士(インハウスロイヤー) / 法化 / 法務相談体制 / 成年年齢 / 学校の働き方改革 / 校則 / スクールカウンセラー / 教員の労働問題 / 専門職の学習共同体 / 働き方改革 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、学校現場で生じる法律問題に関わる弁護士として近年導入されているスクールロイヤーと呼ばれる外部人材の実態を調査し、その影響を多面的かつ実証的に考察するものである。本研究は、各地で既に導入されているスクールロイヤーをについて、形態・件数・ケース内容・経年変化・利用者の意識などを量的・質的に調査し、「チームとしての学校」、学校現場の「法化」、教職の専門性、教員の負担軽減と働き方改革、海外の学校現場と弁護士の関係との比較、他の外部人材との比較、いじめ対応など、様々な視点からスクールロイヤーを考察することで、学校で外部人材を活用する意義と課題について学術的に提言することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究は学校に対して法的な助言を行うスクールロイヤーと呼ばれる弁護士の職域を多面的に調査・分析・考察することを目的としているが、本年度は20以上に及ぶスクールロイヤーに対する現地調査やインタビュー調査等を実施し、大きな成果を挙げることができた。 まず、一般的なスクールロイヤーの形態として、教育委員会からの相談を担当する弁護士、学校からの相談を直接担当する弁護士、学校法人の顧問弁護士として活動する弁護士等にインタビュー調査を行った。次に、近年注目されているスクールロイヤーの形態である、教育委員会職員として勤務する弁護士にインタビュー調査を行った。さらに、国立附属校や私立学校で導入されているスクールロイヤーや、子どもオンブズパーソンを担当する弁護士、学校法人理事を担当する弁護士等、様々な形態のスクールロイヤーに対してもインタビュー調査や参与観察等を行った。調査にあたっては、自治体の規模・学校数・児童生徒数等の他、弁護士の専門性や近隣自治体の政策の影響度合いについても変数として設定している。 また、文部科学省や日本弁護士連合会が実施したスクールロイヤーに関する調査結果についても二次分析を行うとともに、公開されているいじめ重大事態調査報告書や子ども権利擁護委員の年次報告書等を用いて学校と弁護士の関係の実態を分析した。 上記の調査・分析の結果としてわかったことは、スクールロイヤーと呼ばれる弁護士の職域や業務内容は現場のニーズに応じて多様化しており、学校文化と弁護士の法的思考が衝突する際には、子どもの最善の利益のために止揚化する意識が非常に強いということである。また、一般にスクールロイヤーの相談案件としては、いじめや保護者対応が多いとされるが、調査結果では必ずしもそうとは限らない実態も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究期間を延長したことを受けて、新型コロナウイルスの影響で実施できていなかった実地調査やインタビュー調査を実施することができた。ただし、調査日程が今年度に集中した関係で経年変化について調査することができておらず、また現在も一部の調査対象候補のスクールロイヤーに対する調査ができていない。特に、海外のスクールロイヤー調査に関しては日程的にも厳しく、今後も実施できるかどうかは未定である。 成果物としては、いじめにおける学校警察連携に関する論文が重要である。この論文は直接的にはアメリカの学校警察官制度であるスクール・リソース・オフィサーに関する海外の先行研究を検討したものだが、前述のスクールロイヤーに対する調査で判明したいじめ対応における学校や弁護士の悩みを紹介しており、一部の研究者や有識者が主張する安易ないじめ対策を批判的に検討している。また、生徒指導の場面におけるスクールロイヤーの役割についても言及した文献を執筆した。一般紙ではあるが、スクールロイヤーに対する調査や、研究者自身がスクールロイヤーの実務で手掛けた案件を元に事例紹介の連載を担当したことも研究上の成果として挙げられる。 なお、調査の実施は順調に進展した一方で、論文執筆や学会発表には時間をかけることができなかったため、次年度の研究費はごく僅かだが、執筆活動や学会発表準備に充てたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の全国のスクールロイヤーに対する調査とは別に、研究者自身も実務家としてスクールロイヤーを担当しているので、そのデータを整理した上で分析対象とする予定である。研究者は教育委員会の相談を担当する一般的なスクールロイヤーを10年近く担当しており、当該活動で得られたデータは経年的なパネル分析が可能である。また、研究者は全国的にも珍しい弁護士資格を有する教員として学校に勤務しており、当該活動で経験したケースについてもオートエスノグラフィー等の質的分析手法を用いて分析することを予定している。 研究者自身の活動に基づくこれらのデータと、全国のスクールロイヤーに対する調査や文部科学省・日本弁護士連合会の調査で得られたデータを比較ないし統合して分析・考察することで、より精緻なスクールロイヤーの実態を研究した成果が得られると考えている。 本研究はあくまでもスクールロイヤーを「チームとしての学校」を支える学校の外部人材の一職種として位置付けており、スクールカウンセラーをはじめとする他の外部人材との比較分析や、対話的な交流も視野に入れていることから、別の研究費にて実施中の学校の外部人材の専門性に関する調査研究も踏まえて研究成果を活用したい。また、本研究はスクールロイヤーの持つ教育的意義についても着目しており、実際に前述のスクールロイヤーに対する調査でも、スクールロイヤーと他の弁護士の専門性に関する最大の相違点として、教育活動自体への関与が知見として得られていることから、法教育やシティズンシップ教育の研究分野にも研究成果を活用したい。
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