研究課題/領域番号 |
20K22249
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
本間 淳子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60526763)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 和語動詞リスト / 学習リソース / 文字学習の負担軽減 / 日本語の初級学習者 / 学習の見取り図 / ストーリー性 / LMSでの動画配信 / 容易なアクセス / 音声付き動画 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語の初級学習者にとって、文法の学習と語彙の拡張に加えて、複雑な表記の体系(ひらがな・カタカナ・漢字)の学習は大きな負担となっている。また、「辞書で調べる」ことは外国語学習の基本であるが、初級の日本語学習者にとって「漢和辞典」を使うことは容易ではない。 本研究では、常用漢字(2010年内閣告示2136字)のうち和語動詞(「食べる」「行く」など約700字)に着目し、「漢字の意味」から「動詞の意味」を学び、「漢字の送り仮名」から「動詞の活用」、すなわち、文型を学ぶことを提案する。その際の学習リソースとなる和語動詞リストを作成し、提供する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、1)日本語学・日本語教育・国語教育・遠隔授業等について専門的知識の供与を受け、2)初級の日本語学習者のためのリソースを作成、3)リソースの試聴を日本語学習者に依頼、4)作成の経緯の記録・報告などを行った。その過程で、扱う対象を当初に想定していた「和語動詞」から「漢字一文字とひらがなで構成される動詞・イ形容詞・ナ形容詞」に広げることとなった(67字を付加した)。これにより、全体的な分類作業などが容易に進められるようになった。 2)については、初級の日本語学習者のためのリソースとして、概要の説明、日本語能力試験(JLPT)N5、N4、N3に対応した使用例、個々の漢字の学習スライド、復習用のまとめスライドなどの音声入り動画13本(各3~6分程度)を作成し、試聴を依頼中である。各動画のタイトルは、「漢字イントロダクション1~4」「ストーリー:シンデレラ1~3」「漢字 for people & family」「漢字 for number & counting」「漢字 for adjectives1」「漢字 for verbs1」「まとめ①数字」「動詞の活用」である。 4)としては、対象とする漢字の選定の経緯などを、『初級日本語学習者用の漢字学習リソース作成の課題 ―「漢字一文字とひらがなで構成される動詞・イ形容詞・ナ形容詞」の場合―』(桜美林大学紀要人文学研究第3号)に記した。また、音声入り動画作成の着想を得た実践例について口頭で報告した(『学習リソースとしての日本語で語られたストーリー ―初級の成人学習者の事例から―』 早稲田大学日本語教育学会)。さらに、本研究の背景である常用漢字の複雑さについても検討の必要があることを口頭発表で提起した(『学習者との協同作業で創る学習リソースの提案』 日本社会教育学会第69回研究大会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により調査方法を変更したが、次第に調査環境が整い、方向性が見定められてきた。 第一に、調査開始の背景と経緯を報告した(『初級日本語学習者用の漢字学習リソース作成の課題 ―「漢字一文字とひらがなで構成される動詞・イ形容詞・ナ形容詞」の場合―』桜美林大学紀要人文学研究第3号)。具体的には、①常用漢字(2136字)の採番、②本調査が対象とする「漢字一字とひらがなで構成される動詞」の決定と動詞番号の採番(v1~v811番)、③新たに含めた「漢字一字とひらがなで構成されるイ形容詞・ナ形容詞」の採番(i-a na-a812~878番)の手続きを示した。また、④常用漢字全てを「動詞・イ形容詞・ナ形容詞の読み」の有無で8分類した。⑤JLPTN5の100字については、「8分類のマッピング」を示した。そのうち、⑥「N5の漢字33字の動詞活用グループ分け」リストを作成した。さらに、③の理由については⑦「漢字一字とひらがなで構成される自動詞・他動詞とイ形容詞・ナ形容詞」のリストを作成して、説明した。「自動詞・他動詞とイ形容詞・ナ形容詞」については、ある成人学習者Dさんに作成した教材例を⑧として紹介した。 第二に、上記⑧の実践の経緯を口頭で報告した(『学習リソースとしての日本語で語られたストーリー ―初級の成人学習者の事例から―』 早稲田大学日本語教育学会 2022年春季大会 3月19日オンライン)。 第三に、作業を具体的に進める中で「常用漢字」の煩雑さが再認識された。日本語学習者にとってだけでなく、日本語母語話者にとっても「漢字一字の複数の読み方」は、覚えやすいわけではない。そこで、常用漢字の制定の経緯について、かつての漢字廃止論などにさかのぼって検討する必要があることを口頭(オンライン)で報告した(『学習者との協同作業で創る学習リソースの提案』 日本社会教育学会第69回研究大会 自由研究報告 2022年9月16日オンライン)。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍以降、調査者が担当する各大学の日本語科目は、2020年度は全面オンライン、2021・2022年度には一部対面/オンラインのみ/ハイブリッドと様々な形態で開講されてきた。大学内への入構禁止などは不幸な出来事であったが、その間、学習者も教員もラーニング・マネージメント・システム、Web会議、音声・動画資料の双方向的な受け渡しによって、学びの場を維持する努力を続けてきた。この「おかげで」、場所(教室内外に加えて、来日できない在外の場合を含む)や時間(在外との時差を含む)の制約から大きく開放された。今後は、初級(のうち日本語能力試験JLPTのN5・N4レベル)に焦点を絞りつつ、できる限り多くの情報を「音声入り動画」で公開することを考えている。 これまでに作成済みの13の動画を動画サイトで限定公開し、日本語非母語話者(留学生)に試聴を依頼中である。その結果を聞き取り、作成済みの動画の修正、新たな動画の作成を急ぎたい。それらの動画は、無償のラーニング・マネージメント・システム上に配置し、対象者を増やしつつ、試聴・利用を依頼する予定である。 具体的な成果物のアウトプットと並行して、作成の背景と経緯の記録も急務である。本調査は、学習者が自分自身のストーリーをより自由に語るためのツールとすることをめざしているが、上述した口頭報告・紀要執筆の際には、既存のシステム(JLPTなど)に基づいた分類・説明が必要となった。学習者にとっては、市販の教科書・教材類と対照させることも重要であるので、この煩雑さをクリアすることをめざしている。また、このような煩雑さの背景についても、何らかの方法で、学習当事者に伝えていくことができればと考えている。
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