研究実績の概要 |
1.アルコール使用障害(以下AUDsとする)の入院生活を終わり、社会生活を営む対象者8名に対して,月1回のインタビュー調査を継続的に実施した。そのうち7名は再飲酒することなく経過したが,1名は再飲酒に至った。再飲酒に至った1名は,その後再び断酒を継続していた。 2.前年度までの結果では,再飲酒を促す強い渇望について,生体データとの関連から検出することが出来なかったため,自ら記録した生活記録と再飲酒へのプロセスを検討することを通じて日常生活上の引き金を探索していくこととした。その結果,日常生活において自己肯定感を低下させる出来事と,その解釈に対する過去のトラウマ体験の想起が再飲酒の動機に関連していた可能性が示唆された。さらに,再飲酒後は主治医に再飲酒体験を話すことが出来, その後の治療に反映させることが出来たことが成功体験化し,再び断酒を継続する動機づけになっていた。 3.一方,再飲酒することなく経過した7名に関しては,断酒を継続している仲間との連帯感が強く,自己肯定感を低下させる可能性がある体験に対しても,仲間と体験を話し合うなどの機会を通じて共有することにより,目的を同じくする仲間への帰属意識が強まり再飲酒を予防する動機づけに関連していることが示唆された。 4.新型コロナウイルスの感染拡大による制限の多くが解除されたため,今年度から対象者に対するインタビューを対面形式で実施した。再飲酒に至った1名の再飲酒に至るプロセスから過去の体験が引き金になっている可能性が示唆されたため,トラウマ・インフォームドケアの観点からより多くの対象者にインタビューを継続し,データの蓄積を図っていくことを継続することとした。
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