研究課題/領域番号 |
20K22299
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松浦 浩平 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90874355)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 時間変更 / フェラー性 / 一点拡張 / レゾルベント / ヘルダー連続性 / 強フェラー性 / 反射壁ブラウン運動 / 一意拡張性 / 拡散過程 / 自己共役作用素 / 熱核 / 境界条件 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、確率過程に時間変更という変換を施した際に付随して得られる自己共役作用素と熱核について調べる。時間変更がある種の特異性をもつとき、付随する自己共役作用素の境界条件や熱核の連続率の定量評価について満足できる結果は少ない。非有界閉領域上の時間変更した反射壁ブラウン運動の拡張に対応する自己共役作用素の無限遠点における境界条件、リウビルブラウン運動の熱核のヘルダー連続性といった具体例の研究を通じ、拡散過程の特異な時間変更に付随する解析的な対象についての基礎理論を進展させる。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続いてマルコフ過程のフェラー性について研究を行った。フェラー性はマルコフ過程から定まる半群によって記述され、解析的な形で定義される一方、状態空間の無限遠点におけるマルコフ過程の挙動を映し出す。そのため、フェラー性が成り立つための十分条件を整理することは確率論における自然な問題の一つといえる。本研究では特に時間変更という操作によってフェラー性が安定するかという問題について考察し、時間変更を特徴付ける測度の言葉で安定のための十分条件を記述しようとした。これは京都工芸繊維大学の森隆大氏と共同で取り組んだものである。前年度の時点では、状態空間をコンパクト化し、爆発後のマルコフ過程の拡張(一点拡張と呼ばれている)を用いて十分条件を記述しようとしていたが、研究を進める際にこの論法に不十分な点が見つかったため、2024年度はその修正に時間を割くことになった。修正のためフェラー性の必要十分条件に関する既存の結果を整理することになり、その結果、状態空間のコンパクト集合における平衡ポテンシャルを用いた特徴付けが有用であるという感触を得ることが出来た(平衡ポテンシャルは時間変更と相性の良いレゾルベント核による表示をもつことが知られている)。この特徴付けがリーマン多様体上の拡散過程に対して成り立つことはAzencottによって示されていたが、その証明を精査し、一般のハント過程に対しても成立することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェラー性の時間変更による安定性の問題については、同性質に対するポテンシャル論的な特徴付けが有用という認識を得ることが出来た。これは前年度に想定していなかった進展であるが、同時にこれまでに導入していた論法に修正が生じたため、大きな進展があったと判断することは出来ない。その他の課題である反射壁ブラウン運動の一意拡張性の研究や、解析半群とそのレゾルベントとの関係については関連研究について学習を進めてはいるものの、大きな進展は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
フェラー性の時間変更による安定性の問題については、前年度と同じく京都工芸繊維大学の森隆大氏と共同で議論を重ねていく。同氏を招聘するだけでなく、オンラインでの研究討議も行って、研究連絡を密に取る。その他の課題については関連研究や文献を整理するなどしてより多くの情報を得るように努める。特にリウビルブラウン運動(d次元ブラウン運動の時間変更過程として定義される)については最近研究が進み、フェラー性をもつことが明らかにされた。その証明の詳細について把握し、今後の研究の推進を図る。
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