研究課題/領域番号 |
20K22308
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 愛媛大学 (2021-2022) 岡山大学 (2020) |
研究代表者 |
寺本 有花 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (60883262)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 圧縮性流体方程式 / パターンダイナミクス / liquid crystal / 特異摂動 |
研究開始時の研究の概要 |
反応拡散方程式や非圧縮流体方程式などの放物型方程式系については,中心多様体理論や解析的半群理論などに基づいた有効な数学解析の理論が整備されてきた.本研究では,それらの理論の準線形双曲-放物型方程式系への拡張を行う.そのための一つの試みとして,申請者はこれまでに主として人工圧縮方程式系に対する解析を行ってきた.まず,その研究過程において明らかになった問題の解決を目指す.さらに,その研究を発展させ,圧縮性Navier-Stokes方程式に対する圧縮性テイラー渦の分岐・安定性問題及び,熱対流問題の時間周期解の分岐・安定性問題及びそれらの時空周期パターンのまわりの解の漸近挙動の様相を詳細に解明する.
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研究実績の概要 |
本研究課題は,流体力学の基礎方程式である圧縮性Navier-Stokes方程式を始めとする準線形双曲-放物型方程式系におけるパターンダイミクスの数理構造の解明とその解析手法の確立を目的としている. 圧縮性Navier-Stokes方程式のような散逸構造を持つ双曲-放物型連立方程式系に対しては方程式の持つ双曲型の側面により,放物型方程式に対して確立された解析手法が有効でないため,手法の開発と数理構造の解明が望まれている.本研究では,それらの理論の準線形双曲放物型方程式系への拡張を行う. 本年度は,異方的性質を示す圧縮性流体,liquid crystalについての研究を進めた.Ericksen-Leslie systemは流体の方程式に加えて,流速と棒状分子の配向方向との非線形相互作用の影響を考慮した方程式系である.その中で,等温条件下での解析は多く行われているものの,圧縮性かつ温度を変数として方程式に組み込んでいるものは少ない.昨年度取り組んだ,ある種の簡易化を施されたEricksen-Leslie systemの無限層状領域上での解の存在と減衰評価に加えて,本年度は漸近挙動と温度に関するNeumann境界条件下での考察を行った.反応拡散方程式系の場合は,方程式に含まれるパラメータの値によっては分岐パターンが空間周期的進行波になることが知られており,例えば水平方向をx軸にとったとき,無限遠方で異なる周期を持つ2つの周期パターンをつなぐ解が存在することが分かっている.今回の結果は,このような放物型方程式系に対して確立された空間周期的進行波の変調ダイナミクスの解析を,圧縮性Navier-Stokes方程式へと拡張する手掛かりになると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の目的は圧縮性Navier-Stokes方程式を始めとする,散逸構造を持つ準線形双曲-放物型方程式系におけるパターンダイナミクスの解明と解析手法の確立である.そのための一つの試みとして,私はこれまでに主として人工圧縮方程式系に対する解析を行ってきた. その中で,人工圧縮方程式系のHopf分岐の特異極限問題に取り組み,マッハ数が小さい場合に人工圧縮方程式系の定常解からの時間周期解の分岐とその安定性を示し,二本の論文にまとめることができた. また,本年度は昨年度に続き,圧縮性かつ非等温状態のEricksen-Leslie systemについて解析を行った.3次元無限層状領域において初期値が小さい場合の解の存在を示し,その減衰評価の導出に加え,漸近挙動と,温度に関してはNeumann条件下での解析も行った.反応拡散方程式系や非圧縮Navier-Stokes方程式においては,水平方向をx軸にとったとき,x=+∞,-∞で異なる周期を持つ2つの周期パターンをつなぐ解が存在しそのつなぎ目は欠陥と呼ばれる界面を形成することが知られている.今回の結果は,そのような放物型方程式系に対して確立された解析を圧縮性Navier-Stokes方程式へと拡張するひとつの足掛かりになると考える.こちらについては,現在論文にまとめているところである. 以上のように研究は概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を論文にまとめつつ,時間周期解の分岐安定性についても引き続き研究を進める.振動積分を用いた考察をさらに進化させて,静止状態でない一般の定常解からの分岐・安定性解析を行う.分岐時間周期解のマッハ数に関する一様評価を導出し,マッハ数が小さいときの人工圧縮方程式系および圧縮性Navier-Stokes方程式系と非圧縮Navier-Stokes方程式系の時間周期解の周りの解のダイナミクスの関係を調べる. 研究を遂行するために,偏微分方程式に対する関数解析的手法,実解析的手法,無限次元力学系などの様々な手法を駆使する必要があると予想され,そのような知識,技術を習得するとともに研究を推進していく.また,セミナー,研究集会等の機会を積極的に利用して関連する研究者と討議することで研究の推進を図る.
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