研究課題/領域番号 |
20K22328
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2022) 名古屋大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
田財 里奈 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (10880023)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | カゴメ超伝導 / 電荷ループ / 多体理論 / カゴメ系超伝導 / ボンド秩序 / 超伝導 / 多体効果 / 汎関数くりこみ群 / 電荷ループ相 / 幾何学的フラストレーション / 多体相関 / 非局所多極子秩序 |
研究開始時の研究の概要 |
金属中の無数の電子が織りなす新規相転移や輸送などの創発現象は、物性物理学の中心課題である。そこではスピン軌道相互作用(SOI)と電子相関が重要な役割を果たす。最近10年で、SOIの理論はトポロジカル電子系の分野、電子相関の理論は鉄系超伝導体などd電子系の分野で、それぞれ目覚ましい発展を遂げた。しかし、両分野の境界である強いSOIが存在する強相関系の研究はほぼ手付かずである。 本研究では、diagramによる摂動論と汎関数くりこみ群を併せたHybrid理論を構築し、摂動論を超えた汎用性のある理論を完成させる。本理論より、SOIと強相関効果の協奏による遍歴電子系の相転移・輸送現象の新奇機構を見出す。
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研究実績の概要 |
今年度は、2021年度に研究を進めた「新規カゴメ超伝導AV3Sb5における電荷秩序・ボンド秩序の理論」を更に発展させ、「カゴメ超伝導AV3Sb5における電荷ループ秩序相及び、巨大磁化の起源」の理論研究を行った。 近年、世界中で盛んに研究されているカゴメ超伝導体における重要未解明問題の1つが、高温における時間反転対称性の破れの起源である。本研究では、時間反転対称性の破れの起源として、電子が永久自発電流として振る舞う「電荷ループ秩序」の発現を予言した。特に重要な点として、電荷秩序の量子揺らぎが媒介し、電荷ループ秩序相が発現するという新規多体理論を見出した。更に、この電荷ループ秩序によって物質内に大きな自発磁化が生じることを数値計算により示した。これらの研究結果は、最近の国内外の実験結果とも整合する。本研究の成果は、現在2編の論文(プレプリントとしてarXivに投稿済み)としてまとめており、これまでに国内外の学会・研究会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に達成した「新規カゴメ超伝導AV3Sb5における電荷秩序・ボンド秩序の理論」を更に発展させ、「電荷ループ秩序相」という理論・実験両面から興味深い現象を予言することが出来たという点で、本研究は「おおむね順調に進行している」に該当すると考える。特に、最近の実験で観測された「時間反転対称性の破れ」の起源に関しては、これを説明できる微視的多体理論が存在せず、理論家にとっての重要未解明問題であった。本研究では、この起源が電荷秩序揺らぎを媒介とする電荷ループ秩序相であることを提唱し、この解明の一翼を担った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでに得られた電荷秩序・電荷ループ秩序・超伝導相の多体理論を更に発展させ、「カゴメ超伝導AV3Sb5の相図全体」の解明を行う。特に、電荷秩序や電荷ループ秩序下で発現する超伝導状態を解明することは、理論・実験両分野で待ち望まれており、本研究でこの解明に貢献したい。
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