研究課題
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ウラン化合物が示す強磁性超伝導は、スピン三重項超伝導や、トポロジカル量子コンピュータの構成物質の有力候補と考えられていることから、これらの物質の超伝導発現機構の解明は、基礎科学のみならず応用面でも極めて重要である。これまでの強磁性超伝導体は常圧で強磁性を示し量子臨界点から外れているが、最近超伝導が報告されたUTe2が強磁性量子臨界点に位置していると考えられているため、量子臨界揺らぎとその超伝導との関係を調べる上で最も適している。本課題では、UTe2を通して強磁性超伝導発現機構の謎に深く関係している量子臨界現象の性質解明を目指し、申請者がこれまで研究成果を残してきた磁気熱量効果による研究を行う。
スピン三重項超伝導体UTe2の精密磁化測定を、25Tまでの強磁場、温度は2Kから60Kにおいて網羅的に行った。この測定からdM/dT=dS/dBの関係により、磁場‐温度相図においてエントロピーマッピングを行った。(Mは磁化、Tは温度、Sはエントロピー、Bは磁場である。)この結果、b軸方向の磁場では、増強超伝導が見える磁場付近からエントロピーの上昇が観測できた。a軸方向では7Tあたりにエントロピーの増大が見られる。これは以前報告されていたリフシッツ転移と整合するものである。これらの結果はエントロピー増大が示す揺らぎの増大と超伝導の関係性を明らかにする重要な発見である。
ウラン系の強磁性超伝導体はスピン三重項と考えられているが、その異常な性質は従来の超伝導のものとはかけ離れており、研究対象として注目を集めている。また、スピン三重項超伝導体は量子コンピュータのカギとなる物質と考えられている。したがって、その超伝導の発現機構の解明は、学術的にも社会的にも大きな意味を持つ。非従来型の中でもスピン一重項の超伝導体では、その常伝導状態が異常な非フェルミ液体という相で、そこから超伝導が発生する。スピン三重項超伝導の常伝導相の性質はどのような性質を持つのか?この研究を揺らぎの指標であるエントロピー測定を通して行った。結果、超伝導と揺らぎの関係性を明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
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