研究課題/領域番号 |
20K22374
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木邑 真理子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40879699)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 矮新星 / 降着円盤 / X線観測 / 数値シミュレーション / 粘性 / 白色矮星 / 不安定性 / 活動銀河核 / 多波長観測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、宇宙における様々な爆発的増光現象を統一的に理解するための第一歩として、その中心エンジンであると考えられている降着円盤の研究を行う。主な対象天体は、観測しやすくこれまでに最も降着円盤の研究が進んでいる矮新星である。矮新星における突発的増光現象は降着円盤の熱不安定によるものだと考えられているが、その全貌は明らかになっていない。本研究では、多波長観測と円盤半径可変の数値シミュレーションを用いて円盤不安定モデルを検証・改良する。また、矮新星の研究で得られる知見を応用し、活動銀河核における円盤由来の突発的増光現象を解明することにも挑戦する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、矮新星の数値シミュレーションとX線観測データの解析を行い、成果を論文化した。前年度に出版した論文(Kimura et al. 2021c)で議論した、はくちょう座SS星の2021年の変則的なアウトバーストの数値シミュレーションを行った。その結果、変則的なアウトバーストの前兆現象は、観測論文で示唆していたように円盤粘性の増加で、変則的なアウトバーストは、伴星から輸送されるガスが円盤をオーバーフローして円盤内側まで到達することで説明できる可能性が高いと分かった。この成果は、Kimura & Osaki (2023)として出版済である。 また、2021年から2022年にかけてアウトバーストを起こした矮新星AT2021afpiのX線データをNICER望遠鏡を用いて取得し、解析を行った。その結果、通常の矮新星よりも酸素とネオンのラインが強いことを発見した。このことは、この天体が持つ白色矮星が酸素・ネオンガスの多い白色矮星であることを意味するため、X線データを用いて白色矮星の質量を求めた結果、チャンドラセカール限界質量に近い可能性があることが分かった。もしこの見積もりが正しければ、この天体は将来ミリ秒で自転する中性子星と軽い恒星の連星系になると考えられる。どのようにしてミリ秒で自転する中性子星が誕生したかはよく分かっておらず、理論予想値と観測で見つかっている天体の個数にギャップがあるため、この研究により、白色矮星と軽い恒星の連星系からの進化経路の研究が進むと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
矮新星に関する部分は、観測した現象を数値シミュレーションで再現でき、順調である。AT2021afpiの観測により、予想以上の進展があった。一方で、活動銀河核への応用は進んでいないため、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、矮新星の研究で得られた知見を活動銀河核など他の天体の研究に応用する。共同研究者との議論の中で、近年の観測の進展具合から、活動銀河核に応用する前に、まずより重要度が高く確実に円盤不安定が起こっていると考えられるブラックホールと普通の恒星の連星系(ブラックホール連星)に応用するのが良さそうであると分かった。そのため、一部の計画を変更し、ブラックホール連星の数値シミュレーションを行う。 また、これまでの研究成果を6月、9月の国際学会で発表する。
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