研究課題
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本研究の意義は,高エネルギ物質および高エネルギ物質系液体推進薬の爆轟特性の基礎的な理解にある.アンモニウムジニトラミドや硝酸ヒドロキシルアミンといった高エネルギ物質やこれらを基材とする液体推進薬は自身の熱分解や燃焼によりその高い化学エネルギを瞬時に発揮する.しかし、高エネルギ密度ゆえ,これらの熱分解・燃焼は爆轟現象へ遷移する可能性がある.爆轟が発生した場合,衝撃波を伴うため,取扱時のハザードリスクが重大化する.そこで本研究では,高エネルギ物質および高エネルギ物質系液体推進薬の利用時の安全性を拡充すべく,気相領域を対象とした爆轟特性を理解し,爆轟現象を予測する関数の導出を目指す.
高エネルギー物質であるアンモニウムジニトラミド(ADN)およびADN系高エネルギー密度推進剤であるADN-EILPsに対し,高い取扱性を担保すべく,甚大なリスクを伴うハザードの一つとして考えられる爆轟現象に注目し,これらの気相爆轟特性の基礎的理解を行った.ADNおよびADN-EILPsの分解ガスの初期状態を計算的に検証し,圧力環境により組成が変化することを見出した.0次元・1次元の反応シミュレーションから,ADNおよびADN-EILPsの分解ガスが取りうる気相爆轟特性を明らかにし,固液状態ではよりエネルギ感度が低いとされるADN-EILPsの方がADNに比べ,気相爆轟性が高いことが示唆された.
本研究の成果は昨今利用拡大や新規開発が進む高エネルギー物質(特にADN)とその推進剤に対して随伴する取扱時の安全性確保に資するものである.特に,ADNは単体では衝撃・摩擦といった外的エネルギに対して非常に感度が高い反面、イオン液体化させたADN-EILPsではこれらが鈍化するため,高いエネルギー密度と高い取扱性の両立が可能であるという関係がこれまで知られていた.しかしながら本研究が指し示した気相爆轟特性の関係は,これに反する結果となり,取扱時の最小化を目指すにあたり,ハザードシナリオのさらなる拡大の必要性が示唆された.また,本研究で得られた知見は他のADN系推進剤にも十分応用可能なものである.
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