研究課題/領域番号 |
20K22653
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0702:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日野 直也 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (80881531)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 集団細胞遊走 / FRETバイオセンサー / MAPキナーゼ / 増殖因子シグナル / 細胞形態 / 肝細胞増殖因子 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでに、上皮細胞の集団遊走過程で先導細胞特異的に持続的なERKキナーゼの活性化が起こることを見出した。本研究では、先導細胞特異的なシグナル活性動態の制御機構と、このシグナル活性の先導細胞の機能獲得における意義を明らかにする。特に、先導細胞は後続細胞よりも大きく伸展している点に着目し、細胞伸展という機械的刺激により先導細胞のシグナル活性動態が制御される可能性を検証する。FRETバイオセンサーを用いた分子活性イメージングを軸に細胞の形態と細胞内シグナル動態・細胞機能との関連を明らかにし、細胞集団内での位置特異的な細胞運命決定機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度はフェルスター共鳴エネルギー移動 (FRET) の原理に基づくバイオセンサーを用いて、上皮細胞の集団遊走過程で先導細胞特異的に持続的なHGF-Met-ERKシグナルの活性化が惹起されるメカニズム、またこのシグナル活性化の集団細胞遊走における意義について解析を行った。 まず、免疫染色法によりHGF受容体であるMetの発現量と局在を解析したところ、先導-後続細胞間で明確な違いは見られなかった。そこで、先導細胞は後続細胞よりも大きく伸展している点に着目し、細胞伸展により先導細胞のHGF感受性が上昇し、持続的なERK活性化が起こる可能性を検証した。アクチン重合の阻害剤や細胞-基質間接着を司るタンパク質の遺伝子欠損により細胞伸展を抑制すると、先導細胞でのHGF-Met-ERKシグナルの活性が低下した。一方で、細胞間接着を担うタンパク質の遺伝子欠損を行った場合には先導細胞でのシグナル活性に明確な変化は認められなかった。このことから、先導細胞でのHGF-Met-ERKシグナルの活性化には細胞間相互作用ではなく、細胞-基質間相互作用による制御が重要であることが明らかになった。 次に、先導細胞でのHGF-Met-ERKシグナル活性化の意義について検討した。光遺伝学ツールによるERK活性化が細胞形態に与える影響を解析したところ、ERK活性化により先導細胞の葉状仮足形成が促進されることが分かった。また、培地へのHGF添加により先導細胞でのHGF-Met-ERKシグナル活性を惹起すると、非添加時と比較して集団遊走の移動速度が上昇することを示した。これらの結果は、HGF-Met-ERKシグナルの活性化が先導細胞としての性質の獲得に寄与することを示唆するものである。
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