研究課題/領域番号 |
20K22666
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 沙央里 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (10877319)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 送粉共生 / ハナホソガ属 / 虫こぶ / コミカンソウ科 / コマユバチ科 / 寄生蜂 |
研究開始時の研究の概要 |
生物種間の相利共生は、何らかのメカニズムにより安定的に維持されていると考えられてきた。しかし申請者らは、コミカンソウ科植物とそれらの花に送粉・産卵するガ類(ハナホソガ属)との送粉共生関係で、共生者から寄生者になったと考えられるハナホソガ種を見出した。この寄生的送粉者は虫こぶ形成性を持ち、宿主の種子生産を著しく低下させる。一方、寄生蜂による寄生率は共生的送粉者より低い。そこで本研究では、この種が寄生蜂からの防衛のために虫こぶ形成性を進化させたことで寄生的になり、共生的送粉者を絶滅させながら分布を広げていると仮説を立て、飼育系を用いた操作実験とハナホソガの遺伝的変異の地理的パターンにより検証する。
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研究実績の概要 |
先行研究において我々は、コミカンソウ科植物とそれらの花に送粉・産卵するガ類(ハナホソガ属、 Epicephala)との送粉共生関係で、共生者から派生したと考えられる寄生的なハナホソガ種(Epicephala corruptrix)を見出した。この、E. corruptrixは虫こぶ形成性を持ち、宿主の種子生産を著しく低下させる。このため、宿主を共有する別種のハナホソガEpicephala obovatellaと比べてより寄生的な種である。 本研究では、寄生的送粉者であるハナホソガの1種(E. corruptrix)は、寄生蜂からの防衛のために虫こぶ形成性を進化させたことで寄生的となり(仮説1)、宿主植物(コミカンソウ科カンコノキ属)を共有する共生的送粉者E. obovatellaを絶滅させながら分布を広げている(仮説2)、という2つの仮説を立て、飼育系を用いた操作実験とハナホソガ2種の遺伝的変異の地理的パターンにより検証することを目指している。 本年度は、仮説2の検証を目指した。昨年度に引き続き手元にあるサンプルと今年度奄美大島で得られたサンプルに関して分子実験を行い、ハナホソガ2種の遺伝的多様性の比較を行った。仮説2の通りE. corruptrixの遺伝的多様性はE. obovatellaより低いのかを確認し、分布の遷移と虫こぶ形質との関係の解析を試みた。その結果、ハナホソガ2種ともに複数のハプロタイプをもつことが明らかになったが、2種の分布の混在地域(南西諸島)のサンプルが乏しいため、当初の仮説の検証にまで至っていない。次年度に南西諸島でのサンプリングを行い、本年度の結果と合わせて系統地理的解析を行う予定である。また、本年度の奄美大島の調査で、ハナホソガ2種の分布が宿主植物の形質と関係があることを示唆する観察結果が得られ、仮説2の更なる展開が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続きCOVID-19の影響を受け、延期していた沖縄県本島および離島での野外調査が実施できなかった。このため、その地域に生息するE. corruptrixのサンプリングが未実施となってしまった。また、宿主植物の挿し木及び維持に使用していたガラス温室の空調が真夏の猛暑の影響で壊れてしまった。修理は困難を極めたため、新たに半野外での立て直しを図ったが、その仕組みを一から作るのに時間がかかり、状況の回復と実験進行に遅れが生じた。さらに、冬季は例年稀に見る寒波の影響を著しく受けてしまい、温室故障後も維持できていた宿主株が休眠あるいは枯死してしまい、操作実験を延期せざる終えなくなった。以上のことから、遅れている状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
延期していた沖縄県周辺の離島での調査およびそれらで得られたサンプルの分子実験を行い、本年度までの結果に追加し、まとめて系統地理的解析を行う。また、枯死した宿主個体を補うために、新たに宿主の挿し木を行い、操作実験を行う予定である。
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