研究課題/領域番号 |
20K22668
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松本 哲也 岡山大学, 環境生命科学学域, 特任助教 (80876243)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | テンナンショウ属 / 植物分類学 / 送粉者シフト / 種分化 / 生殖的隔離 / 生物多様性 / 分類 |
研究開始時の研究の概要 |
一般に,異なる花粉運搬者 (送粉者) を利用する植物は,花の形によって他種から区別できる.一方,キノコバエ類のような外見ではなく匂いで花を識別する昆虫を利用する植物では,送粉者の異なる種間でも花形態では分類できず,種多様性が過小評価されている危険がある.本研究では,キノコバエ類に送粉される広義マムシグサを対象に,①形態と②送粉者相の広域調査によって隠蔽種を探索し,種の独立性を③遺伝解析で検証する.
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研究成果の概要 |
日本列島で急速に多様化したサトイモ科テンナンショウ属は,種ごとに異なるキノコバエを送粉者として利用する.この種特異的関係には,花の外見よりも香りが重要だと考えられている.そうであれば,形態に基づき分類されてきた既知種から,見た目は同じだが送粉者の異なる隠蔽種が見つかると予想した.そこで,岡山県全域に分布する広義マムシグサ50集団680個体を対象に,①訪花キノコバエ相に基づいた隠蔽種の探索,②隠蔽種間での形態比較と③遺伝的分化の評価を行った.その結果,形態では区別できないが異なる送粉者を利用する2タイプが見いだされた.遺伝的な分化は認められたが連続的であり,種分化のごく初期段階だと考えられた.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
花の形態すなわち外見は,これまで重要な識別形質の一つとして,多くの植物分類群で用いられてきた.実際に,植物は多様な花のかたちを進化させることで,それぞれ異なる送粉者に適応してきた.送粉者の違いは系統間での遺伝的交流を抑制するため,種分化を駆動する重要な要因だとみなすことができる.しかし,送粉者の誘引手段は視覚だけではない.とりわけ嗅覚を利用して送粉者を誘引する場合,必ずしも種分化の過程で花形態の種間差が生じるとは限らず,形態に基づくこれまでの分類方法では種多様性の過小評価を招く危険性がある.本研究は,現にこの問題が存在することを示した数少ない事例であり,分類の方法論に新たな視点をもたらした.
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