研究課題
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肺癌細胞でサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)の阻害により、癌細胞のhallmarkの一つである過剰中心体の細胞分裂時の二極への収束が阻害され、細胞が多極性分裂を余儀なくされアポトーシスに至ることが報告されている。通常、正常細胞には過剰中心体は存在しないので、anaphase catastrophe誘導は癌細胞に特異的な治療戦略として期待できる。本研究ではCDK2選択性の高い次世代CDK2阻害薬であるCYC065と、種々の肺癌細胞株、肺癌マウスモデルを用い、CDK2阻害剤による過剰中心体収束抑制の機構を新たな癌治療戦略として確立することを目指す。
正常細胞では中心体数が2つに厳密に制御されるが、癌細胞では過剰な中心体の存在が知られる。細胞分裂時に過剰中心体が二極に収束することで癌細胞は正常な二極性細胞分裂が可能となるが、サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)の阻害で過剰中心体収束が阻害され、多極性細胞分裂からアポトーシスに至るanaphase catastropheが誘導される。本研究ではCDK2特異性が高い次世代CDK2阻害薬であるCYC065を用い、マウス及びヒト肺癌細胞株や複数の肺癌マウスモデルにおいて、CYC065の肺癌でのanaphase catastrophe誘導による抗癌活性を示した。同機序の臨床応用が期待される。
癌細胞では過剰中心体を高頻度に認めることは臨床的にも報告されてきたが、この過剰中心体を癌治療に利用する試みの報告は多くなく、実用臨床からは遠いのが実情である。本研究で、過剰中心体収束の阻害によるanaphase catastrophe誘導を、既に臨床試験中のCDK2阻害薬で、さらには、厳しい予後である肺癌を対象として示したことは、同アプローチによる癌治療戦略の可能性を広げ、学術的にも臨床的にも意義深いものと考えている。
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Mol Cancer Ther
巻: 20 号: 3 ページ: 477-489
10.1158/1535-7163.mct-19-0987
Trans Am Clin Climatol Assoc
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