研究課題
研究活動スタート支援
IgA腎症患者血中では異常な糖鎖構造をもつIgA(糖鎖異常IgA)が増加しており、病態に関与している。IgA腎症は上気道感染や腸炎などの粘膜感染契機に病態が悪化することから、粘膜関連リンパ組織の腎炎原性IgA産生の関与が疑われる。アジア人では特に上気道炎契機に病勢が悪化することが多く、近年日本人患者における口蓋扁桃摘出術の腎保護効果が示された。そこで、本研究ではIgA腎症患者と腎症非発症慢性扁桃炎患者の口蓋扁桃を用いて、腎炎原性IgA1糖鎖構造形成機序の解明を目指す。
我々は、IgA腎症患者の特徴として、O結合型糖鎖数の減少したIgA1(O-glycan decreased-IgA1)の血中増加を見出した。本研究では、異常糖鎖構造をもつIgA1の産生母地としての口蓋扁桃の役割を明らかすることを目指した。本研究から、腎症未発症の慢性扁桃炎患者血中にもIgA腎症患者と同様の異常糖鎖IgAの割合が増えているが、IgA腎症患者ではさらにIgA値の血中増加が認められることが明らかとなった。口蓋扁桃ではIgA産生形質細胞の割合が慢性扁桃炎患者に比して増加していることが明らかになった。口蓋扁桃で産生された形質細胞の血中へのミスホーミングが病態に関わる可能性がある。
近年IgA腎症の治療薬としてLong lived plasma cellをターゲットにした抗CD38モノクローナル抗体の臨床治験が開始されている。本研究によって得られた、IgA腎症患者口蓋扁桃中IgA産生形質細胞増加は、扁桃摘出術だけでなくこうした治療薬の有用性を裏付ける可能性がある。我々は、最終年度に、フローサイトメトリーを用いて、IgA形質細胞中Long lived plasma cell (LLPC)サブセットを解析する手法を確立した。IgA産生Long lived plasma cellについては生理的・病態的意義について未解明な点が多いため、さらに詳細な検証が期待される。
すべて 2023 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
iScience
巻: 25 号: 11 ページ: 105223-105223
10.1016/j.isci.2022.105223
Journal of Clinical Medicine
巻: 10 号: 16 ページ: 3467-3467
10.3390/jcm10163467