研究課題
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近年の遺伝子解析技術の進歩により成人の慢性腎臓病患者においても、小児期に末期腎不全に至ると考えられていた嚢胞性腎疾患やネフロン癆が含まれていることが分かってきた。 しかしながら、日本における成人末期腎不全患者のこのような遺伝学的背景については全く知見がない。我々が構築した網羅的遺伝性腎疾患診断技術を用いて成人末期腎不全患者の遺伝学的背景を明らかにし、遺伝学的にネフロン癆と診断された症例に特徴的な臨床・病理学的所見を世界に先駆けて明らかにすることが本研究の目的である。
本研究では、成人末期腎不全患者の遺伝学的背景を明らかにするために、複数の透析病院と共同研究を立ち上げ、100名以上の説明同意を得て血液検体の採取を行った。その後、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析の準備を進めた。また、腎臓の組織学的検査により、小児期に末期腎不全に至るとされるネフロン癆が疑われた成人患者の血液検体を日本全国から集めて網羅的遺伝子解析を行い、ネフロン癆の遺伝子変異を認める成人患者の臨床および病理学的特徴を明らかにした。この研究結果は国際腎臓学会が発行している国際科学誌であるKidney International Reportsに発表した。
今回の研究により、本邦でも成人慢性腎臓病患者の中に小児期に末期腎不全に至ると考えられていたネフロン癆患者が潜在していることが明らかとなった。さらに、遺伝学的にネフロン癆と診断された症例は、腎生検時の年齢が若い傾向があることを明らかにした。また、ネフロン癆の遺伝子変異を認める患者には、組織学的に尿細管の基底膜に厚い二重化が認められることを明らかにした。これらの結果は、本邦において、成人でも原因不明の腎機能障害患者に対してネフロン癆を疑う重要性を明らかにすると同時に、その臨床像は成人におけるネフロン癆の診断の一助となるものであり、今後の慢性腎臓病診療に繋がることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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