研究課題/領域番号 |
20KK0017
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 館長 (10192808)
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研究分担者 |
柳沢 史明 西南学院大学, 国際文化学部, 講師 (10725732)
緒方 しらべ 京都精華大学, その他の部局, 講師 (10752751)
亀井 哲也 中京大学, 現代社会学部, 教授 (60468238)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | イメージ / 人類学 / 芸術 / 先住民 / 博物館 / アート |
研究開始時の研究の概要 |
人類学と芸術研究は、過去100年の間たがいに接触をもたず、別々の道をたどってきた観がある。その二つの領域が近年急速に接近してきている。本国際共同研究は、博物館人類学の国際的2大中核研究拠点といってよいカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学の人類学博物館(MOA)と我が国の国立民族学博物館(民博)の間での国際共同研究を加速・強化し、それぞれのもつ研究の蓄積と学術資源を統合して、「イメージ人類学」とも呼びうる研究領域を創成し、人類学における芸術研究の刷新を図ろうとするものである。 研究の推進にあたっては、若手の育成に最大限の配慮をし、将来的に継続可能な国際共同研究ネットワークの構築を図る。
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研究実績の概要 |
計画3年目にあたる令和4年度は、年度当初に新型コロナウイルス感染症による渡航制限が継続する中、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館(MOA)との共同研究はオンラインでの開催とし、特に先住民族の造形の生成原理とその著作権の管理について意見交換を重ねた。 研究代表者の吉田憲司は、MOAの研究者も参加する英国・イーストアングリア大学での国際シンポジウムで、博物館が生成する異文化イメージの在り方についての基調講演を行ったほか、ザンビアのコミュニティ博物館の現地ワークショップにオンラインで参加し、地域の振興に果たす博物館の役割について知見を深めた。また、国内において祭礼の創生とそのイメージの差異化について比較調査を進めた。 研究分担者の亀井哲也は、南アフリカへ渡航し、ヨハネスブルグのウィットウォーターズランド大学付属美術館にて、パンデミック下での大学教育や博物館活動について学芸員と意見交換を行なって情報を収集する一方、ンデベレ地域では、ビーズワーク制作者がビーズを「オリジナル」と「フェイク」に区分する語りに着目し、そのイメージの分類原理を明らかにした。 緒方しらべは、大統領選挙による政情不安定のためにナイジェリアへの渡航を回避し、日本国内にてナイジェリアでの調査協力者を介してラゴスでの展示のあり方と、地方都市イレ・イフェでのアートのあり方について、比較・検討した。また日本国内では、画家やミュージシャンらを研究会やイベントに招聘し、大学生らと交流するなかでインタビュー調査を実施し、アートの生成についての比較分析を進めた。 柳沢史明は、蒐集家とその室内展示に焦点をあてて研究をすすめた。とりわけ20世紀初頭のフランス人美術蒐集家の邸宅の室内装飾や美術作品の展示手法について、雑誌メディアやアーカイブ資料を渉猟し、蒐集におけるプリミティヴィズムの刻印を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画3年目にあたる令和4年度は、年度当初に新型コロナウイルス感染症による渡航制限が継続する中、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館(MOA)との共同研究はオンラインでの開催とし、対面での共同研究は実施できなかった。また、アフリカでの共同調査も、一部調査地域で内戦(マリ、モザンビーク、ザンビア国境地帯)、大統領選挙(ナイジェリア)等による政情不安により、研究協力機関と研究協力者の活動が制限され、当初の計画通りにアフリカへ渡航して共同研究・共同調査ができる状況にはなかった。 一方で、国内と現地とをオンラインで結んだ遠隔調査や共同研究会は積極的に実施して、共同研究機関との間で問題意識の共有をはかり、それを踏まえた国内での研究活動は着実に進めてきた。その一環として日本国内で実施した調査の結果、研究代表者の吉田がアフリカ・ザンビアで明らかにした、20世紀末以降の民族集団単位での祭礼の生成とその差異化の動きと平行する現象が、江戸期から明治初頭の日本国内各地でも確認できることが判明した。このことは、祭礼のイメージの生成原理の一端を解き明かしたことにほかならず、イメージ人類学の創成にむけた大きな研究成果だと受け止めている。 令和5年度には、こうした研究の成果も踏まえ、カナダと日本国内で対面による共同研究を実施して、これまでの知見を共有し、今後の課題を整理したうえで、アフリカにおける現地調査も実施することにより、芸術研究の刷新=イメージ人類学の創成に向けた作業を本格化させたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度となり、世界各地で新型コロナウイルス感染症との共生が図られつつある。 令和5年度は、オンラインでの共同研究を定期的に実施し、これまでのMOA、民博のそれぞれの研究の蓄積をもとに、「イメージ人類学」の理論的枠組みの構築を進める。 9月には、カナダ側研究者を日本に招聘し、研究代表者の職属する国立民族学博物館にてシンポジウムを開催する。 また、10月には、研究代表者および研究分担者がカナダに渡航し、対面での共同研究会を開催して当該課題についての共通理解を深める一方、カナダ北西海岸先住民族のイメージ生成について共同での現地調査を実施する計画を立てていてる。 感染症状況の改善と治安状況の安定を確認したうえで、アフリカでの現地調査も実施する。なお、状況の改善・安定が見られず各国への渡航が今年度も実現できない場合には、これまで培ってきた現地研究機関との協力関係を最大限に活用し、現地研究協力者による調査を開始し、電子メールやオンライン会議を用いた情報共有を図って、研究を遂行する。さらには、調査対象地域の近隣国での調査、もしくは国外居住の調査地域出身者を対象とした調査も視野に収め、研究を遂行する。こうして、順次蓄積した知見を、共同研究会や総括シンポジウムで総合し、最終的に「イメージ人類学」の創成を実現する。
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