研究課題/領域番号 |
20KK0029
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 廉孝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90708398)
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研究分担者 |
井奥 成彦 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (60184371)
谷ヶ城 秀吉 専修大学, 経済学部, 教授 (30508388)
山本 裕 獨協大学, 経済学部, 准教授 (10550113)
三科 仁伸 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10825152)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 日本経済史 / 植民地 / 台湾 / 朝鮮 / 満洲 / 植民地貿易 / 一次産品 / インフラ / 1次産品 / 商品市場 / アジア経済史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は,戦前期日本の内地・植民地間における相互依存的な経済構造の実態と形成要因を提示し,植民地領有がもたらす経済成長の基礎的な促進もしくは制約要因を解明する。 既往研究は(1)植民地貿易の拡大と商品市場の質的変容が相互的かつ連鎖的に継続する循環構造,(2)植民地貿易のネットワークと内地・植民地間貿易の並行的な変容過程を捉えることができず,戦前期内地経済の成長過程に植民地産品の供給拡大が果たした役割は解明されていない。そこで,植民地貿易の量的拡大と当該貿易品を扱う商品市場の質的変容を複眼的に捉える分析,植民地貿易の変容を規定した政策的要因に関する検討から(1)(2)の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は,昨年度までと同様に本研究課題の遂行に必要な史料・データの収集を進めるとともに,収集済史料・データに基づく分析を進めた。令和3年度まではCOVID-19の影響で史料調査を実施できていなかったが,令和4年度より史料調査を再開した。それにより成果を出せる見込みが立ちつつあり,2022年7月にパリで開催されたWorld Economic History Congressにおいて中間報告を実施した。研究代表者と研究分担者が実施した作業は以下の通りである。 研究代表者(前田)は,東京・大阪・熊本の月次先物米価データと大阪の内地米・朝鮮米現物価格データを作成・分析し,朝鮮米移入拡大が内地米穀市場の米価形成に及ぼしたインパクトについて考察した。そして,"Distinctive pricing in the metropole of the integrated empire's economy: Japan's central and local rice markets, 1900-1939"と題した論文を作成した。研究分担者(三科)は,植民地地域で必要とされる人材開発を目標として設立された拓殖大学の事例に基づき,20世紀前半の本邦の対外的な拡張と,それに伴う植民地地域への人材供給に果たした高等教育機関の役割について,検討をおこなった。研究分担者(谷ヶ城)は,WEHCにおける本研究課題のパネル報告の討論者を担当した。そのほかに,本研究課題と関連の深い学術書3冊の書評(竹内祐介著『帝国日本 と鉄道輸送』;堀内義隆著『緑の工業化』;久保文克著『戦前日本製糖業の史的研究』)を執筆した。研究分担者(山本)は,帝国日本における満洲炭流通の分析に必要な史料(香川大所蔵)の収集・分析を進めた。研究分担者(井奥)はWEHCパネル報告で討論者として上記各研究に対するコメントをした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は(1)植民地貿易の実態について統計資料から定量的把握を試みた既往研究に対して,内地産品・植民地産品間の品質的差異に着目し,植民地貿易の量的拡大と商品市場の質的変容を相互的かつ連鎖的に継続する循環構造として理解する,(2)「植民地地域史」的な視角から考察を進めた既往研究に対して,各植民地のインフラ政策が当該地・内地間のみならず植民地相互間の貿易に及ぼした効果まで検討し,植民地貿易のネットワークが変容した過程とそれに連鎖して内地・植民地間の貿易が変容した過程を動態的に理解する,(3)各植民地内における個別の商品・政策に着目した植民地経済史もしくは数量的把握を重視した植民地貿易史の既往研究に対して,海外共同研究者の協力の下で台湾・韓国・中国における1次資料の収集とそれに依拠した考察を展開し,実証水準の上昇と戦前期内地・植民地経済間における構造的連関を提示することが目的である。したがって,本研究課題で海外所蔵史料の調査は根幹を成すが,COVID-19の影響から海外史料調査の進捗は大幅に遅れている。そこで,国内所蔵史料の調査と国内古書店からの史料購入を先行させることによって進捗の遅れを最小限に留められるように努力をしている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は海外渡航が可能な状況が整ったことを受け,WEHCで中間報告を実施した研究のさらなる実証水準向上に必要な史料・データの調査・収集を急ぎたい。研究代表者・研究分担者が令和5年度に予定している具体的な作業は以下の通りである。 研究代表者(前田)は,"Distinctive pricing in the metropole of the integrated empire's economy: Japan's central and local rice markets, 1900-1939"で実施した月次データによる分析の精緻化を目的に,大阪公立大学・関西大学等に所蔵される史料から日次データの作成と分析を進める。さらに,最終年度を迎える本研究課題の成果をまとめる目的で複数回の国際学術セミナーを開催する予定である。研究分担者(三科)は,令和4年度までの検討を踏まえ,上記大学の『同窓会報道』などの分析により,個人の具体的な活動を検討することで,帝国日本の領域内における包括的な人的移動と,それに果たした高等教育機関の役割を明らかにする計画である。研究分担者(谷ヶ城)は,日本・台湾間の海運網が拡大していく過程(物流の量的な変化)と商取引のあり方が質的に変化する過程(商流の質的な変化)を関連づけて観察する作業を目的に,(1)国立台湾図書館,(2)国立台湾大学図書館,(3)国家档案管理局国家档案閲覧中心で資料調査を実施する。研究分担者(山本)は,収集済史料の読解から得られた分析結果を論文としてまとめる。特に,流通の担い手となる組織について,既往の研究では示されていない組織的性格の側面に注目する。研究分担者(井奥)は,植民地産大豆・小麦の流通構造解明に必要な史料の収集を目的として(1)国立台湾図書館,(2)国立台湾大学図書館等で調査を実施する。
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