研究課題/領域番号 |
20KK0038
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
加藤 久美 和歌山大学, 観光学部, 教授 (30511365)
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研究分担者 |
淑瑠 ラフマン 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 研究員 (30467097)
Miller Graham 和歌山大学, 国際観光学研究センター, 客員教授 (40832697)
パストール・イヴァールス フアン 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステイナビリティ高等研究, リサーチ・アソシエート (50867637)
Sharpley Richard 和歌山大学, 国際観光学研究センター, 客員教授 (60863082)
Doering Adam 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (70784560)
松尾 茜 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, リサーチャー (80885484)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | デスティネーション / ガバナンス / サステナビリティ / コミュニティー / ビジョン / レジリエンス / 政策 / リジェネラティブ / バリューベース / 地域循環共生圏 / 無形文化 / 地域 / Resilience / Socio-ecological value / Governance / Tourism / Community |
研究開始時の研究の概要 |
COVID-19による急速な社会変化に直面する今、「環境との共生」を社会の揺るぎない基盤として再確認し、持続可能な社会を構築する理論と実践を見直す必要がある。それらは、伝統価値に基づく地域のレジリエンス、共生への方策は地域ガバナンスを基盤とする。レジリエンスは変化に対応し適応する能力、学びや未来のポジティブな機会を予測する能力、地域ガバナンスは、ビジョン構築、多様なステークホルダー結集によるキャパシティ強化、リーダーシップを重視、SERに基づく地域循環共生圏ネットワークの構築を推進する。先進3カ国を拠点とした研究を行い持続可能なガバナンスの地域導入方法や人材育成事業の仮説モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
持続可能な観光政策での海外先進地域(New Zealand, Finland, Portugal)との研究交流を深め国内主要地域5ヶ所(京都2、下呂、吉野熊野、松本)にて議論の場を設けた。各地域における産官学連携の場となり、特に地域の歴史・文化を基盤とする連携や地域主導の重要性が強化されたこと、さらにシリーズタイトルをDestination Wellbeing(DW)としたことで、次の研究の方向性が得られたことが大きな成果である。根本的基盤と見なされるのは資源の保全・平等な利用(基本理念:ネイチャーポジティブ)、多様なニーズ、ステークホルダーの連携(ダイバーシティ、連携)で、これらの視点を基盤にDWの定義、推進方法、マネジメントへの活用を検討していくことには大きな意義がある。理論的にはリジェネラティブ論が指針を示すこと、旅行者、事業者、住民等全ステークホルダーの意識統一を図るビジョンが重要な役割を果たすことなどが明らかとなり、今後の理論的、実践的研究にも重要な指針が得られた。サステナビリティの重要性は、SDGs、脱炭素化、最近の世界情勢下での平和の重要性などでその意識はより強まってきている。コロナ禍を経て観光の回復が官民共に推進される中、観光における/観光による/観光のためのサステナビリティとは何かを今一度確認する必要がある。それは、サステナビリティがビジネスチャンスとして表面的に利用される、いわゆるグリーンウォッシュ現象が見られること、また来訪者の急激な増加にマネジメントが追いつかない、また日本の地方での人口減少や高齢化によるキャパシティ不足、そして、円安による訪日外国人の急増による地域への軋轢が見られ、サステナブルツーリズムに期待されていた地域への利益が得られない場合が多い。観光はWellbeingを創造する力があることを損なわないマネジメントアプローチが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初の渡航制限や多様な変化に伴い、計画が遅延していたが解消しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
パンデミック後の回復と共に、「オーバーツーリズム」への懸念が再燃している。日本政府もこれを重要課題と受け止め(2023.8.26)、オーバーツーリズム対策を取りまとめる方針を示し、特設サイトやプロジェクトを設けている。オーバーツーリズムは、「リベンジツーリズム」や円安の追い風による観光客の急増という一過性の現象ではなく、持続可能な観光への理解、推進、評価方法がまだ不十分であることを示している。持続可能な観光は「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」(UNWTO, 2007)と定義される。持続可能な観光の推進・評価は、サステナビリティの主要3分野、経済・社会・環境に関する項目を満たすべき最低基準として示し、その達成度が評価基準とされてきつつも、達成目標は、「来訪者数」、「観光収入」、「観光客満足度」に比重を置く傾向から脱却できていない。地域活性化や地方創生の文脈で観光の地方誘致、分散が推進されても、受け入れ体制や人材不足によりそれが達成できないこともオーバーツーリズムの一因となっている。すなわち、観光地域の体制強化なくして持続観光な観光の達成は難しく、オーバーツーリズム対策も、表面的なものとなってしまう。持続可能な観光地域づくりを根本的に問い直し、観光地域の体制強化、利益を優先する評価指標を設定する必要がある。これを本研究では、「観光地域ウェルビーング(DW)」と位置付ける。世界各国で推進される持続可能な観光ビジョンづくりを参考に地域の健康、幸せ、経済・社会・環境の「豊かさ」を推進する方向性をマネジメントアプローチに活かす方策を検討していく。
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