研究課題/領域番号 |
20KK0043
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
二階堂 裕子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (30382005)
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研究分担者 |
駄田井 久 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (60346450)
東口 阿希子 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (90804188)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 外国人技能実習生 / 食料供給システム / 環境保全型農業 / ベトナム / 技能移転 / 農業の高付加価値化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、アジア圏で拡大する食料供給システムや、それを支える人的資源をめぐる課題をふまえながら、外国人技能実習制度を活用した食と農業の領域における人材育成と技能移転の可能性を探究することにある。 具体的な研究対象地として、近年、日本との間に緊密な食料貿易のネットワークが醸成されており、しかも技能実習生の最大の送出国であるベトナムに注目する。そして、ベトナム人研究者との協働のもと、当該国において、食と農業の領域に関するどのような社会的ニーズがあるのかを把握することにより、本制度を媒介とした技能移転のための条件を考察する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、ベトナム人共同研究者との連携によるベトナムでの情報収集に力点を置き、計4回渡越した。具体的な訪問先は、①ダックラック省バンメトート、②南部メコンデルタのカントー市、③同じく南部メコンデルタのカマウ省カマウ市、および④ホーチミン市である。 ①バンメトートでは、愛媛県西予市の農業協同組合の関連事業所を訪問し、当該事業所の活動と外国人技能実習制度の関わりについて調査したほか、現地の他の農業事業所と農林水産業関連の行政機関より、有機農法による農産物生産や農業体験を核としたアグリ・ツーリズムをめぐる現状と今後の課題について情報を収集した。②カントー市では、有機農業の実践を通じた地域づくりによって当該地域における貧困問題の解決をめざす団体を訪問し、活動の現状と課題について聴き取りを行った。③カマウ市では、環境保全型のエビ養殖に取り組む農家を訪問し、農家がそうした養殖方法を採用するに至った経緯や今後の展望について詳しく聴き取った。さらに④ホーチミン市では、アジアや欧米各国の食品関連企業が出展する大規模な食品博覧会への訪問や、ベトナムの飲食関連の大手総合商社における聴き取り調査を通じて、ベトナムにおける食品・飲食をめぐる動向や、当該分野で求められている知識・技能について情報を収集した。 上記調査より、以下の知見・仮説を得た。第1に、ベトナムにおいて都市と農村の経済格差が拡大する中、農村部の低所得層の間で日本での就労に対する意欲は未だ衰えていない。第2に、ベトナムの経済成長を背景に、有機農法がもたらす農産物の高付加価値化や、農村・農業体験を楽しむ新たなツーリズムへの関心が高まっていること。第3に、技能実習制度を媒介とした技能移転の実現に向けて、技能実習生を受け入れる日本の特定地域と、彼・彼女らを送り出すベトナムの特定地域の間に、長期的・有機的関係を構築することが有効であること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の収束にともない、ベトナムでの共同調査をようやく本格的に開始することができた。現地調査に際しては、まず何よりも、ベトナム人の研究協力者らが有する豊富な人脈が重要な役割を果たした。同時に、研究代表者と研究分担者がこれまで日本国内の調査で培ったインフォーマントとの信頼関係が、バンメトートやホーチミンでの調査実施を可能にした。その結果、当初の計画よりも渡越回数が多くなり、質・量ともに充実した情報を得ることができたうえに、今後の研究の方向性がより明確となった。
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今後の研究の推進方策 |
アジア圏で拡大する食料供給システムや、それを支える人的資源をめぐる現状を明らかにしたうえで、外国人技能実習制度を活用した食と農業の領域における人材育成と技能移転の可能性をさらに探究するため、主として以下の調査研究活動を展開する。今後も引き続き、日本人とベトナム人の研究メンバーがともにこれらに参加する予定である。 第1に、令和5年度調査の知見を受け、ベトナムの南部メコンデルタにおいて、農産物やエビの生産をめぐる現状と課題に関する情報をさらに収集する。そのうえで、そうした課題の解決に活用しうるどのような社会資源(施設、制度、知識や技能など)が当該地域にあるのか、もしくはないのかを検討する。その際、農産物の付加価値化やアグリ・ツーリズムなどの動きも視野に入れながら、日本の技能実習制度(就労育成制度へ移行する見込み)との連動の可能性も考察したい。 第2に、第1と連動して、令和5年度に予備調査を行ったカントー市の有機農業を核とした地域づくりに取り組む団体で、具体的にどのような活動が展開されており、そこに関わる人々がどのような課題に直面しているのかについて、さらに調査を進める。また、当該団体が日本の技能実習制度の活用に高い関心を示していることから、本制度の活用に向けた道筋を団体関係者とともに探る。こうしたアクションリサーチの可能性を追究したい。 第3に、日本におけるベトナム人技能実習生の受け入れ社会・団体のうち、送り出し社会と有機的・協働的なつがなりを構築している事例について情報収集を行い、現地調査を行う。現時点では、農業協同組合などがそうした取り組みの主体となっているケースを想定している。そのうえで、送り出し社会と受け入れ社会が対等で持続的な関係を構築するための条件を探究する。
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