研究課題/領域番号 |
20KK0044
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
額賀 美紗子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (60586361)
|
研究分担者 |
金 侖貞 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40464557)
徳永 智子 筑波大学, 人間系, 准教授 (60751287)
高橋 史子 東京大学, 教養学部, 特任講師 (80751544)
布川 あゆみ 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 准教授 (80799114)
三浦 綾希子 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (90720615)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 移民生徒 / 公教育 / 教育保障 / ケア / ウェルビーイング / 中等教育 / 国際比較 / 包摂 / 教育機会 / 新型コロナ / 支援 / パンデミック / 教育格差 / 移民の子ども / 社会統合 / 文化的に適切な教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は新型コロナ・パンデミックが各国の移民・難民の子どもに及ぼしている影響を探究し、ポストコロナ時代においてかれらを包摂する文化的に適切な教育のありかたを国際比較によって検討する。対象国をスウェーデン、イギリス、ドイツ、アメリカ、韓国、日本として、①コロナ禍によって各国の学校教育の政策、制度、実践に生じている変化、②その変化の中で顕在化している移民・難民の子どもたちの学業的・社会情緒的困難、③コロナ禍に対応して行われている教育支援とその効果、の3点を明らかにする。各国の移民教育研究者と持続的ネットワークを構築し、排外主義・レイシズムと格差拡大に抗う包摂的な教育パラダイムの構築をめざす。
|
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の三点である。 第一に、都立高校に在籍する移民生徒に関する99校の学校アンケート調査と29校のインタビューの分析を統合し、移民生徒に対する教員のまなざしとニーズ把握、進路支援、中退防止、学校外連携の5つの領域に焦点を当てて考察を行った。この結果は、国内外の学会・セミナーや市民団体の研修会で報告した。世界教育学会やオックスフォード大学主催のセミナーでは、これまでの欧米型モデルとは異なる、ケアと教育を融合した多文化教育モデルを日本の実践事例から立ち上げることの可能性を提起した。 第二に、上記調査にもとづき、コロナ下において高校教員が在籍する移民生徒の困難をどのように認識し対応したかを考察し、論文を執筆した。コロナ禍の中で外国につながる生徒たちの教育機会や居場所が縮小・消失していること,それにもかかわらず,その困難がマジョリティの立場にたつ日本人教員の視点からは見えにくく,学校からの支援を十分に受けられていない状況を明らかにした。その一方で,コロナ以前より福祉的な視点からケアを実践していた学校がコロナ禍で生徒の声を拾い,医療や行政のサービスにつないでいく様子も見出された。これらの考察にもとづき、学校教育の中に福祉的ケアを位置づけることの意義と課題について議論を展開した。 第三に、高校における中退予防の実践とそれが移民生徒に及ぼす影響について、インタビューデータにもとづく分析を進めた。高校の適格者主義、個業化された教員文化、ケア実践を鍵概念として、移民生徒の中退を促進・抑制する制度的・文化的文脈について考察し、投稿論文としてまとめた。 第四に、高校のインタビューデータを報告書としてまとめる作業をすすめた。グッドプラクティスの事例を複数まとめ、対象校とやりとりをして承認を得た。移民生徒の教育保障にかかわる実践を分類し、各項目について分析と執筆を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は国内外での研究報告に力を入れた。国内では、異文化間教育学会でのパネル報告および市民団体である多文化共生ネットワーク東京の研修会で講演を行った。後者では研究者、実践者、行政関係者、メディア関係者など多様なステイクホルダーと知り合うことができ、研究ネットワークが広がった。調査結果は複数の新聞やメディアにとりあげられ、特に高校間の支援格差の問題に注目してもらうことができた。 国外では、オックスフォード大学ニッサン研究所のオンラインセミナーと、シンガポールで開催された世界教育学会大会で報告を行った。世界教育学会大会ではシンポジウムとして採択され、フロアとの活発なやりとりができた。報告をきっかけに、National Institute of Educationの研究者と知り合い、今後の研究交流の可能性を検討することができた。 研究報告のほか、インタビューデータを用いた論文も二本まとめることができた。さらに、インタビュー調査の報告書作成に向けて各メンバーの執筆分担を決め、データの整理と執筆を進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度前半はインタビュー調査の報告書執筆に注力する。報告書の内容を広く公表するとともに、行政や議員、現場の実践者や当事者市民団体との意見交換や交流の機会を持ちたい。 一昨年度末に実施した韓国現地調査のインタビューデータの考察が遅れているので、今年度は計画的に分析と執筆を進めていきたい。 調査としては、都立高校調査を拡充していく予定である。移民生徒の支援にかかわる外部人材-ソーシャルワーカー、多文化共生サポーター、通訳者、夜間中学、NPO等-にインタビュー調査を実施する。すでにアクセスがあるため、スノーボールサンプリングによって協力者を増やしていく予定である。 今後は国内外での調査と成果発信に一層力を入れて励む予定である。特に、韓国、台湾、シンガポールの研究者と連携しながら、アジア型の多文化教育モデルについて検討を続けたい。交流のあるストックホルム大、スタンフォード大、高麗大の研究者とは引き続き情報共有や意見交換を継続し、共同研究の可能性を探っていく。
|