研究課題/領域番号 |
20KK0068
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
増田 孝彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (90733543)
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研究分担者 |
吉村 浩司 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (50272464)
植竹 智 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (80514778)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 冷却分子 / 電気双極子能率 / 光センサ / 電子EDM / 分子 / 対称性の破れ |
研究開始時の研究の概要 |
現在の素粒子物理学の最重要課題の一つである物質・反物質対称性の破れの原因となる新物理探索のため、電子の永久電気双極子モーメント(電子EDM)を世界最高感度で測定する。電子EDMの高感度計測はCP対称性を破る未知の重い素粒子の存在に感度を有する。本研究計画では、海外共同研究者の有するバッファガス冷却による極性分子ThOの量子状態の高精度制御技術と、主に本課題で開発する検出システムを組み合わせたテーブルトップ国際共同実験で、電子EDM測定の世界記録を現在の30倍更新し、CP対称性を破る新粒子の存在を探索する。
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研究実績の概要 |
本年度は米国での現場作業が主な進捗となった。米国ノースウェスタン大学において検出器のインストール作業を進めている中で、真空度の安定性が悪いことが見受けられた。そのため真空システムの問題点の洗い出しを実施し、最終的に真空ポンプ自体の安定性が悪いことが判明した。真空ポンプにはスクロールポンプを使用していたが、複数試したところいずれでも到達真空度の不安定性が見られた。多段ルーツポンプに交換したところ不安定性は見られなくなったため、新たに多段ルーツポンプを導入することにした。 また、実験全体の電気配線の接続によっては、光検出器のベースラインノイズが非常に大きくなる場合があった。現地の共同研究者らと協力して、配線を一つ一つ確認し、適宜アイソレーションを施すことで、2023年終了時は問題ないレベルまでベースラインノイズを低減できている。 2023年度末にはノースウェスタン大学で初めてのThO分子ビームの取り出しに成功し、各種基礎評価を開始した。本実験ではThOのH準位を用いるが、2023年度末現在はまだQ準位での測定を行なっている。特に本課題で主に開発してきた光検出器を用いてビームからの蛍光観測を行い、設計通りの計数率の向上が得られていることが確認できた。一方で、光子数統計を超えるの過大誤差(excess noise)も特定の条件下で見受けられ、今後の原因究明と対策が必要であることもわかった。 並行して、国内では簡易な光学セットアップを組み、共振器の制御に用いる電子回路等の制御系の試作や評価を行った。また指導学生と協力して、ThO分子の内部量子状態とレーザーの相互作用のシミュレーションを実装した。特に重要となるレーザーの楕円偏光度とThOのスピン回転角の相関について計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度中に本課題での担当システムは全てインストールを完了することができ、本実験に向けてThO分子ビームの初観測、設計通りの光子検出レートの向上が確認できた。今後の系統誤差スタディのためのツールとなりうる数値シミュレーションプログラムのプロトタイプを組み、電子スピン回転とレーザーの偏光との相関を計算で評価できるようになった。おおむね、昨年度の今後の研究の推進方策に準拠した進展が得られており、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
国内での必須開発項目は完了し、今後は米国での本実験に向けた最終準備、本実験がメインとなる。そのため今後は渡航費用の確保が重要となる。各種研究助成にアプライし米国での実験を支障なく進行できるよう資金確保に努める。米国滞在時は現場での実験遂行がメインとなるが、国内ではシミュレーションによる最終デザイン確定、本番を見据えた実験詳細のスタディを行う。主に系統誤差要因の評価が目的である。 同時に、国内においてもデータ解析が行えるよう環境整備を行う。
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