研究課題/領域番号 |
20KK0074
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土屋 史紀 東北大学, 理学研究科, 教授 (10302077)
|
研究分担者 |
古賀 亮一 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (10889190)
木村 智樹 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 准教授 (50578804)
村上 豪 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (50734026)
吉岡 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70637131)
垰 千尋 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 主任研究員 (80552562)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 木星磁気圏 / イオ / エウロパ / ガニメデ / JUICE / HISAKI / LAPYUTA / 氷衛星 / 木星 / 氷天体 / 地下海 / 生命環境 / オーロラ |
研究開始時の研究の概要 |
木星や土星の氷衛星は地下海を持ち、生命存在可能環境であることが指摘されている。本研究は、木星磁気圏の高温プラズマと氷衛星の相互作用に注目し地下海の探査を試みる。地下海物質は地殻活動により噴出し、表層に堆積する。堆積物に磁気圏の高温プラズマが衝突し、希薄大気が形成される。飛翔体観測に基づく大気分布と変動の解明から、衛星の内部構造と環境を制約する。先ず、宇宙望遠鏡「ひさき」と米国Juno探査機の観測から、高温プラズマの成因と変動を解明する。次に、高温プラズマにより形成される大気の数値計算を行うとともに、国際氷衛星探査計画と日本の次世代紫外線望遠鏡計画による氷衛星大気観測の立案と要素技術開発を行う。
|
研究実績の概要 |
木星磁気圏の高温プラズマと氷衛星の相互作用に注目し、以下の①・②について研究を遂行した。 ①木星磁気圏内の高温プラズマ環境の形成過程と動特性の解明:(1) 磁気圏内の動特性に影響を及ぼす電場の時間変動特性を、ひさき衛星と東北大学T60望遠鏡(ハワイ)による磁気圏プラズマ撮像を用いて調査した。木星内部磁気圏の電場は太陽風動圧の変動に応答していることに加え、電場の空間構造が不均一であることを初めて示した。また、ひさき衛星の長期連続観測データを用いて、衛星イオ起源のプラズマが外向きに輸送された結果、そのプラズマが衛星エウロパ軌道にまで到達していることを光学観測として初めて確認した。これはエウロパ周囲のプラズマ環境を観測によって把握する新しい手段となる。 ②高温プラズマによる氷衛星表層変性・大気生成の観測検討と、将来計画の要素技術開発:(2)木星磁気圏のプラズマを氷衛星エウロパの大気・表層に入射するテスト粒子計算コードを開発し、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)により観測されたエウロパ大気オーロラの空間構造の物理的解釈を行なった(論文として出版)。更に、エウロパと木星磁気圏プラズマとの相互作用によって木星大気上空で発光するフットプリントオーロラの位置が時間変動を示すことHSTの観測から初めて突き止め、この変動がエウロパ軌道上のプラズマ密度分布の時間変動で説明できることを明らかにした。(4) 欧州の木星氷衛星探査JUICEで計画されている木星電波の掩蔽観測のシミュレーション手法により実施し、氷衛星ガニメデの電離圏の不均一構造が検出できることを明らかにした。(5)日本の次世代紫外線宇宙望遠鏡計画LAPYUTAの概念検討と要素技術開発を進めた。この成果を宇宙科学研究所の公募型小型計画6号機候補への選定に繋げることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①1つ目の課題「木星磁気圏内の高温プラズマ環境の形成過程と動特性の解明」では、日本の紫外線宇宙望遠鏡ひさき、米国のJuno探査機、および東北大学のT60望遠鏡による木星磁気圏観測を用いて、木星磁気圏の動的現象の特徴を明らかにするとともに、動的現象によって内部磁気圏に高温プラズマが注入されることを明らかにすることができた。現象を説明する物理解釈に議論の余地が残っているが、概ね当初の目標を達成した。 ②2つ目の課題「高温プラズマによる氷衛星表層変性・大気生成の観測検討と、将来計画の要素技術開発」では、高温プラズマの照射装置を用いた氷衛星表層の変性実験を進め、表層変性の時間スケールからエウロパでの最近の地殻活動の存在を示唆する証拠が得られた他、プラズマ照射により生じる衛星の希薄大気の再現に成功した。実際のプラズマの照射条件を決めるには、衛星周囲の磁気圏プラズマ状態の把握が必要であるが、ひさき衛星によってエウロパ軌道の磁気圏プラズマパラメータの導出目処を得ることができた他、磁気圏プラズマを衛星表層に入力するテスト粒子計算コードが完成したことによって、実験室実験への接続が可能となった。木星氷衛星探査JUICEで計画されている木星電波の掩蔽を使ったシミュレーション手法が完成し、衛星電離圏探査の目処が立った。日本の次世代紫外線宇宙望遠鏡計画LAPYUTAの概念検討と要素技術開発(ミラーコーティングや検出器開発)を進め、その成果は宇宙科学研究所の公募型小型計画6号機候補への選定に繋がった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は研究機関を1年延長し、2024年度は論文執筆を含めた成果発表をすすめる。 2030年代に行われる木星系国際探査を見据え、本研究の成果を元に、望遠鏡によるリモートセンシング、探査機によるその場・近傍観測、実験室におけるプラズマ照射実験、並びに磁気圏プラズマ・衛星大気・衛星表層相互作用を記述する数値計算を融合した研究計画の立案に繋げる。
|