研究課題/領域番号 |
20KK0079
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
WALLIS R・Simon 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (30263065)
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研究分担者 |
瀬戸 雄介 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (10399818)
永冶 方敬 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (10795222)
吉田 健太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 副主任研究員 (80759910)
大柳 良介 国士舘大学, 理工学部, 講師 (90835729)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | EBSD / 断層岩 / 岩石組織 / Serpentinite / Hough Indexing / Dictionary Indexing / Microstructure / Hough Transformation / Antigorite / Lizardite / 断層岩の微細組織 / 蛇紋石 / 微細組織 / 情報科学 |
研究開始時の研究の概要 |
地震発生は断層におけるずれが原因なので、地震研究には断層の中央部に分布する「断層岩」の特徴究明が重要である。しかし、これらの変形岩の微細組織を可視化する有効な手立てが見つかっていない。そのために、スロー地震の発生メカニズムをミクロスケールの変形様式から理解することが困難な現状がある。本研究は、この空白を埋めるために、材料科学分野の権威である米国のCarnegie Mellon UniversityのDe Graef博士によって開発された最先端の後方散乱電子回折法(EBSD)とビッグデータ情報科学を融合した新手法を同氏の研究室で習得し、岩石学分野に導入する予定である。
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研究実績の概要 |
本年度の主な焦点は、出版に向けた試料の高品質な EBSD マップの作成であった。マントル岩石中に発達した高ひずみ剪断帯や、日本中央構造線沿の変形した花崗岩類やヨーロッパ中央に分布するボヘミア山塊の珪長質片麻岩に由来する、多様な天然高ひずみ岩石を分析した。また、衝突変形実験の結果についても検討した。主な対象鉱物は、アンチゴライト、石英、斜長石、カリ長石、Al2SiO5 多形、方解石であった。石英マイロナイトの微細構造解析に基づく差応力の推定を主要なテーマとした研究をEGUの学術誌Solid Earthに発表した。この論文では、既存の応力計を適応するのみならず、応力計のベースとなっている一軸圧縮の変形実験と一般的に平面応力で起きる天然の変形の特徴と違いに着目し、必要な補正を理論的に導きました。さらに、応力推定に用いられる岩石を構成する石英粒子の大きさは測定面の方位によって異なることを見出し、最終的な推定に反映させたという独創的なところもあった。高ひずみ珪長片麻岩中にみられる異なるAl2SiO5多形の分布と組織は通常の平衡熱力学でその共存関係を説明できないが、変形の影響を考慮するとこれらのを説明できる可能性がある説を立て、それを裏付けるデータを見出した。また、衝突実験試料中に分布する方解石の双晶形成などの塑性変形で記録された応力を明らかにし、研究成果が天体衝突など他分野への広がりを示した。これらの研究成果は、複数の国際大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EBSDシステムには2つの大きな問題があった。1つは、EBSDが設置してある部屋の空調に起因するものだった。空調が故障したために、夏場は室内が高温になったため、結果が不安定になり、適切な真空度を維持するのが難しくなった。2つ目は、年度後半には、検出器が機械的に動かなくなるという新たな問題であった。この問題の明確な原因は特定できなかったが、オックスフォード社に協力を得ながら、この問題を解決することができ、年度末にはEBSDシステムは再び使用可能な状態となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開拓したDictionary Indexing (DI)アプローチは従来の断層岩のEBSD解析より鮮明な結果を得られ、岩石組織の定量化と解析について有用であることをしめした。ただし、膨大なデータが必要とし、より簡易的な手法があると適応幅が広くなる。一つの改善策として、通常のEBSD 解析に用いられるHough Transformation (HI)と今回の研究で注目したDIを組み合わせることでより短時間でDIと同程度の結果を得られる可能性がある。鮮明な回折像を得られればHIは短時間で制度の良い結晶方位決定できるアプローチとして長年採用されてきた。本研究で扱った断層岩など、分析難しい、不均質な試料について解析成功率な試料の場所によって異なる。特に結晶格子が強く歪んでいる領域や粒子の境界については鮮明な結果を得るのが難しい場合が多い。そこで、HIで鮮明な結果を得られた分析点についてそれを採用することとし、不鮮明な回折像しか得られていない、通常の解析で結晶方位決定に不十分な分析点についてのみDIを適応する。さらに、DIの計算はすべての方位ではなく周囲の粒子の方位に近い計算結果を用いる。これらの対策で計算結果を大幅短縮できると考える。であるが、misindexingの問題は少なからず伴う対策になる。どの程度完全解との相違点があるのかを検討する必要がある。短時間で信頼性の高い分析をできるだけ増やすために、DIとHIをうまく組み合わせる必要があると考える。Misindexingの問題を最小限に抑えるために、DIのために行う計算結果と実際の分析結果との差はどこまで許されるか、その閾値の適切な設定は重要な課題である。
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