研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
琉球弧の礁性石灰岩は、変質のために年代推定精度が低かったが、二次的磁性鉱物を化学消磁で除去することで、古地磁気層序の信頼性が高まった。また、地磁気強度変動を地磁気強度標準曲線と対比すれば、高分解能での年代推定が可能である。本研究では、海外共同研究者が保有する高精度の小口径超伝導岩石磁力計を用いて、礁性石灰岩から信頼できる地磁気強度変動を復元し、層序に役立てる。特に、安定磁化を担う走磁性バクテリア起源の磁鉄鉱を生かして、信頼性の高い地磁気強度を復元する。さらに、風成塵の磁性鉱物組成変動と酸素同位体比曲線との対比を行う。これらにより、沖縄トラフ・琉球弧の気候変動と地磁気変動の詳細を明らかにする。
2021年度および2022年度に宮古島で山田(2002)の分類によるUnit1~4の19層準で石灰藻球石灰岩・サンゴ石灰岩・生砕性石灰岩を採取した。採取試料について、ストロンチウム同位体分析の分析準備を進めた。岩石磁気分析では、サンゴ石灰岩よりも石灰藻球石灰岩は単磁区粒子が卓越し、安定磁化を示す。古地磁気試料のうちのUnit4に含まれる77万年前のブルン-松山地磁気逆転境界層準前後の石灰藻球石灰岩試料について、薄片試料を作成し、3mm角に切断してロチェスター大学の小口径超伝導岩石磁力計を用いて段階交流消磁実験を行った。還元化学消磁(Anai et al., 2018)を事前に行ったところ、段階交流消磁の結果は改善された。薄片試料について段階交流消磁をしながらSQUID顕微鏡での観察を行ったが、40mTまでに単磁区粒子成分が段階的に消磁される様子が観察された。また、80mTまで多磁区粒子の磁化方向がランダムに変化する様子も確認された。沖縄島の完新世ボーリング試料についても小口径超伝導岩石磁力計とSQUID顕微鏡で観察を行った。その結果、microbialiteとサンゴが磁化されること、サンゴ藻の磁化が弱いことがわかった。また、microbialiteの掘削壁に近い部分は掘削残留磁化の影響を受けていることがわかった。さらに、地下ダム事業で採取されたボーリングコア2本(掘進長 約38m, 約10m)を譲り受け、ストロンチウム同位体分析用試料計66個、古地磁気分析用試料計82個を採取した。自然残留磁化方位は概ね正帯磁方位であるが、一部逆帯磁であった。また、残留磁化強度は1×10-4~6×10-3 A/mの範囲で変動する。帯磁率は-0.2~6×10-4 SIの範囲で変動する。今後、2次磁化を取り除くために化学消磁と段階交流消磁を組み合わせて信頼できる古地磁気層序の確立を目指す。
3: やや遅れている
液体ヘリウム供給状況の悪化と価格上昇により、走査型SQUID磁気顕微鏡を用いた実験が遅れている。
超伝導岩石磁力計による分析と岩石磁気実験を優先し、走査型SQUID磁気顕微鏡を用いた実験は必要最低限とする。
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