研究課題/領域番号 |
20KK0092
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤川 陽子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (90178145)
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研究分担者 |
谷口 省吾 大阪産業大学, 工学部, 講師 (40425054)
国分 宏城 福島県環境創造センター, 研究部, 研究員 (70792472)
日下部 一晃 福島県環境創造センター, 研究部, 研究員 (10867451)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 放射性セシウム / 地下水 / Chernobyl原子力発電所 / 粒子状物質 / チェルノブイリ / Cs-137 / Sr-90 / 移行現象 / ボルタンメトリ / 管理型埋立処分場 / コンパートメントモデル / 移行 / 廃棄物 / 埋立処分 / 埋立て処分 / 福島第一原子力発電所 / 地層 / 北欧 |
研究開始時の研究の概要 |
福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウム(以下、Cs)を含む廃棄物のかなりの部分は、福島県外で埋立処分を行うことになっている。安全な処分のためにはCsによる環境汚染を起こした等の、埋立処分の失敗事例も含めて、数十年以上の長期観測結果のケーススタディを行い、問題発生時の対策も合わせて示すことが有効と考える。本研究では、福島事故より25年前前のチェルノブイリ原発事故に伴い、Cs含有廃棄物の埋設処分を行ってCsの地中移行の見られた地域で、現地地下水の調査とデータ解析を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は本研究課題によるChernobyl原子力発電所周辺区域(CEZ)での2021年と2022年の調査結果を取りまとめた。土壌への吸着性が高い放射性セシウム(rad-Cs)が、浅層地下水中に広範囲に分布していること、地下水中のrad-Csの20~90%が水酸化鉄鉱物や粘土鉱物等の粒子状物質と結合していること、を見出した。現地機関と別の機関による地下水中rad-Csの分析結果を比較した結果、現地機関のrad-Cs観測データには試料前処理法や地下水中のrad-Cs濃度の空間的不均質性に起因する観測誤差が含まれることが判った。現地機関による長期の地下水中rad-Cs監視データにカルマンフィルターを適用し、観測誤差と過程誤差をトレンドから分離するデータ解析を行った結果、近年は地下水中のrad-Csが減少しているものの、過去には井戸水中のrad-Cs濃度が増減を繰り返していることも明らかになった。この濃度変化は、地表面付近のrad-Csが、土壌層を移行して地表面から約3m下の地下水面に到達した結果とみられた。一方、CEZの土壌のrad-Cs吸着係数Kd(32 L/kg)、かさ密度ρ(1.6 kg/L)、含水率θ(0.1)からrad-Cs遅延係数(1+ρKd/θ)は約513となり、CEZでの降水浸透速度0.25 m/yと遅延係数から3mを浸透するには理論的に約600年を要することになり、実際に観測された現象と矛盾していた。このことからrad-Csのような土壌に吸着しやすい物質について、(i)地中移行機構について更なる検討が必要、(ii)地表面から地下水面に到達し地下水汚染を引き起こす可能性が看過できないこと、が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間中に新型コロナ感染症の蔓延による往来制限、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が起こった。その状況下でも現地の共同研究者の協力により2回の現地調査を行い、地下水中の放射性セシウム分析のみならず、水中の粒子状物質の電子顕微鏡による観察や蛍光X線法による元素分析等を実施した。上記の結果を用いて、多方面からのデータ解析を行い、英語論文として原稿を完成できた点は評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は、新型コロナ感染症とロシアのウクライナ侵攻により期間延長を行ってきた。ウクライナ現地では戦争による人手不足の問題がまだ存在するものの、2024年度にこれまでの調査結果を補完する現地調査を実施可能との連絡が来ている。今年度の調査において新たな結果を得て研究を完成させたいと考えている。
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