研究課題/領域番号 |
20KK0105
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高井 伸雄 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10281792)
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研究分担者 |
越川 武晃 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10399983)
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | ネパール / カトマンズ盆地 / バクタプル / 強震観測 / 速度構造モデル / 強震動評価 / 地下構造モデル / 強震度評価 / 強震動予測 / 世界遺産都市 |
研究開始時の研究の概要 |
2015年4月25日のネパール・ゴルカ地震(MW 7.8)により甚大な被害を受けた地震発生地域ネパールの世界遺産都市バクタプルをテストフィールドとして,現地の地質・地震工学研究者と協働して地震動予測を実施し,その結果であるマイクロゾーニングマップを対話材料として,建築構造・建築史・建築計画等の現地専門家と議論することで,建築的制約の大きい歴史的都市環境における技術指針の提案を探る.これにより,歴史的都市を安全に保存・修復する実際の活動を通して,地震発生地域における歴史的都市の生活環境を考慮した保存,すなわち動態保存手法開発を地震工学的アプローチにより目指す.
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研究実績の概要 |
2023年度は2023年5月,2024年3月に現地渡航した.この2回の渡航で,カトマンズ盆地内にこれまでに設置した強震観測点のうち,岩盤観測点と地盤観測点の1点が,建物の用途変更および建物の取り壊しにより観測継続が困難となったため,新たな建物内に2023年5月にそれぞれ移設した.さらに,現地カウンターパートの所属するKhwopa Engineering Collegeと共同で2023年5月にBhaktapur市のKhwopa Engineering College構内の地表に1点,2024年3月にBhaktapur市の南に位置するSuryabinayak市の岩盤が露頭している地点に2階建て建物内に1点を設置した.2023年10月22日にカトマンズ盆地の西約60 kmを震央として発生した地震(mb 5.2, 深さ25.7 km)の加速度記録が,4地点で得られており,移設した岩盤観測点は最も震央距離が短いが,振幅が小さく,これまでの地点と同様に岩盤サイトの特徴を示していた.地盤上の移設点もこれまでの特徴を有していた.また,バクタプルの新規地点は最も震央距離が長いが,主要動部分の振幅は小さいものの,後続においての振幅は大きく,今後の地下構造の検討を要する地点であることが明らかとなった. 2022年度の渡航時に実施した微動アレー観測結果を整理して,各地点のS波速度構造や平均S波速度を求めた.これをもとに,強震観測点における浅部S波速度構造もしくは得られたレイリー波の位相速度から平均S波速度を求め,地形勾配との関係を検討した.3秒角のグリッド間隔の標高データから算出した地形勾配と高い相関が得られた.これを用いて,カトマンズ盆地における地形勾配から平均S波速度を求める推定式の構築が可能となると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度まで,日本国およびネパール国の往来が原則禁止されていた状況で,現地渡航による観測点の設置,速度構造探査の実施が叶わなかったことが響いた.しかし2022年には渡航が可能となり,予定していた微動観測が可能となった.特に,2023年度には,2度渡航し,現地観測点の整備,移設,新設と非常に重要なタスクが実施された.また,これまでに代表者等により蓄積された基礎データおよび強震観測記録等を用いて,国内・現地での研究者により検討が進められている.これまでに設置した強震観測点で記録された記録から,構築した速度構造モデルが検討され,微動観測結果から速度構造が推定され,一般に利用可能な地形データと併せて解析検討した結果は,今後の当地の地震防災計画策定に貴重な材料を得られたことは大きな進展である.これにより昨年度までの「やや遅れている」から「おおむね順調に進展している」に改善できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年11月より開始した本研究において,2020,2021年度内での渡航が叶わなかったが,現地研究者と連絡を密にとって現地資料の収集を実施してきた.2022年度より渡航が再開可能となり,微動観測,強震観測点設置等が実施できた.最終年度の2024年度も現地渡航を目指し,引き続き現地共同研究者と共にバクタプル市および周辺の地質学的情報の資料収集を実施し,地質学的見地からの盆地構造を把握し,2015年ネパール・ゴルカ地震時の余震観測データ,建物被害データを収集しデータベース化する.特に,現地共同研究者のBijukchhen氏はゴルカ地震時の詳細な建物被害データを入手しており,これを用いた,当時の盆地内の強震動分布特性に関しての分析も実施可能である.また,2023年度の成果である,微動アレー探査結果と地形データの検討結果から,広範囲の平均S波速度推定手法の検討も実施する.また,バクタプル市はカトマンズ盆地の東側端部に相当しており,十分に基盤の傾斜構造が把握されていない.そこで,2021年度の成果であるレシーバー関数による検討を基に,バクタプル市周辺の深~浅部の1,2次元速度構造モデルを推定する.これまでに実施した観測および解析は2024年度も継続され,現地共同研究者及び現地共同研究者の指導するポスドク・大学院生を日本側研究者が指導することで,現地への探査手法の技術移転が実施される.
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