研究課題/領域番号 |
20KK0106
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
後藤 美香 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50371208)
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研究分担者 |
七原 俊也 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00371253)
鎗目 雅 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員准教授 (30343106)
伊豆永 洋一 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (40811683)
時松 宏治 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50415717)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 電力 / エネルギー需給 / デジタル技術 / イノベーション / データ・ガバナンス / 生産効率性 / 電力系統 / 符号付きネットワーク / エネルギー効率 / オークション / 再生可能エネルギー / 最適化 / エネルギー産業 / ビジネスモデル / エネルギー消費行動 / 公共政策 / エネルギービジネス / スタートアップ / 省エネルギー政策 / 経営効率性評価 / 配電ライセンス / 費用評価 / 需給制御 / デジタルトランスフォーメーション / 電力ビジネス / 持続可能な社会 |
研究開始時の研究の概要 |
デジタルトランスフォーメーション(DX)の下で台頭する新たな電力ビジネスとそれが社会に与える影響を、政策、経済、技術の複合的視点から明らかにすることを目的とする。そのために以下の3項目を実施する。①エネルギーとICTのスタートアップ企業が集積する米国ニューヨーク州と再生可能エネルギー導入で先進的な取り組みを行うニューメキシコ州を対象に、電力スタートアップ企業のビジネスモデルについて調査・分析する。②デジタル技術の応用が電力のシェアリングを通じて電力供給の生産性に及ぼす影響を分析する。③デジタル技術の導入が配電システムの保守・運用管理の効率化や費用削減に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
持続可能なエネルギーイノベーションに向けた本研究課題の構成要素である3項目、①制度・政策研究、②経済理論・生産性研究、③配電システム・技術課題研究を次のとおり実施した。 ①持続可能なエネルギー転換に向けて再生可能エネルギーを取り入れた高エネルギー効率でレジリエントなシステムを構築するためのデータ駆動型イノベーションの創出可能性と課題を引き続き検討した。大量・多様なデータ収集、アクセス管理、データ所有権、データ提供・共有のインセンティブ、データ・セキュリティとプライバシー確保など、適切なデータ・ガバナンスに向けた検討を継続した。 ②実証分析では、再生可能エネルギーなどグリーンエネルギービジネス、エネルギー分野にITやAIを応用したビジネスを対象に、国内外のスタートアップ企業を抽出・整理し、生産効率性評価のためのインプットとアウトプットの組み合わせを、先行研究を参照しながら具体的なデータ項目によって検討した。理論分析では、符号付きネットワーク上のコミュニティ抽出に対するアルゴリズムの性能評価、ガウシアングラフィカルモデルのスパース推定に対する前処理アルゴリズムの設計、状態空間モデルによるECサイトのセール効果の分析とクラスタリング手法を用いた商品ジャンルの特徴分析を行った。 ③技術研究では、これまで電圧安定性の観点から見たインバータ電源の導入限界について、短絡容量比を用いた概略評価がなされてきたが、短絡容量比の物理的意味を明確にするため、電力系統の電力-電圧特性を用いて説明することを試みた。また一昨年度に提案したインバータ電源の力率設定法について、短絡容量比と送電損失の関係等について分析を行った。さらに、大都市と地方都市の2ヶ所の一般家庭(約1,300世帯)を対象に、2022年度に行ったアンケート調査結果の分析を継続し、光熱費の増加を抑制するための公的資金の増加額の推定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を構成する3項目について以下のような進捗があった。 ①データ駆動型エネルギー・システムを実用化する上での課題と公共政策・制度設計の検討を継続した。科学論文、特許、産業レポートなどを通じて基本的な情報の収集を行い、関連するデータ、アクター、制度を同定し、エネルギー供給企業、技術サプライヤー、消費者、公的機関の連携を通じたデータ・ガバナンスの可能性と課題に関する検討に進展があった。 ②国内外のエネルギー関連スタートアップ企業の生産効率性評価に対し、既存大企業の評価とは異なる独自のインプットとアウトプットを具体的なデータ項目によって検討し、効率性とともに将来の成長性も加味した分析アプローチを考案したことで進捗を得た。符号付きネットワーク上のコミュニティ抽出に関しては、広範な数値実験の実施に予定以上の時間がかかり成果を公表することができなかったが、ガウシアングラフィカルモデルに対するスパース推定に対しては、問題規模を縮小するための前処理アルゴリズムの設計が完了した。ECサイトの購買データを用いたデータ分析に関する研究成果については査読付き論文誌への掲載が決定した。 ③変動性再エネ普及により電圧に係わる技術課題が懸念される中、適正な電圧維持を可能にするインバータ力率の設定方法を提案し、送電損失などの観点も含め線路に連系可能なインバータ電源の上限値の目安を提示した。またインバータ電源の導入限界の指標として従来から広く用いられてきた短絡容量比の物理的な意味を明らかにした。補助電源としてディーゼル発電機を用いたシステムの運用に関する最適化モデルの構築について研究を深めた。エネルギー消費(需要)を把握するために、大都市と地方都市の2ヶ所の民生家庭部門におけるエネルギー消費行動に関わるアンケート調査を実施し、学生および一般市民の消費行動パターンの違いと家計に与える経済的影響を把握した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は①~③の各項目について以下の通り研究を進める。 ①分散型エネルギー・システムにおいて特に重要になる機能として、単純なデータの仲介から発展したデータ・プラットフォームの構築・維持に注目する。こうしたプラットフォームにおいては、データの透明性の確保と分散型の価値創造の促進が極めて重要な役割を果たす。安全性やセキュリティ、プライバシーなどに関する社会的な懸念に対して、関連するステークホルダーが戦略的に連携し、規制のサンドボックスなどを通じて実証を行っていくプロセスについて、国際的な比較の観点から探求する。 ②分析対象のエネルギー関連スタートアップ企業を確定し、生産効率性と成長性の総合的評価に適したデータ項目の選択とDEAモデルへの応用分析を継続する。得られた成果の論文誌への投稿を完了する。符号付きネットワークに対するコミュニティ抽出に関して、数値実験を早急に終わらせ学会発表および論文誌への投稿を完了する。スパース推定に対する問題規模縮小法を配電システムの運用管理に関する最適化問題に拡張可能か検討する。 ③短絡容量が小さな電力系統に大量の洋上風力を連系した場合を対象に、電圧安定性の面から連系可能なインバータ電源の上限値について検討する。また洋上風力を連系した場合の電圧安定性に関わる研究成果を論文化し発表する。エネルギー消費行動に関するアンケート調査研究については、国際学会等で成果発表を行いコメントを得ることを通じて質を高め、2本の査読付き論文を採択・出版につなげる。また過年度に開発した最適化問題を効率的に解くアルゴリズムの開発を継続する。 項目①~③の研究成果をとりまとめ、データ・ガバナンス、エネルギースタートアップ企業の生産効率性、配電システムの最適化、電力系統技術と電力需要分析のイノベーションについて融合的知見を得る。
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