研究課題/領域番号 |
20KK0113
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒田 眞司 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40221949)
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研究分担者 |
Traore Aboulaye 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20837455)
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 量子ドット / 単一スピン / 表面弾性波 / スピントロニクス / 交換相互作用 / スピン-歪結合 / 量子ビット / スピンー歪結合 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまで自己形成CdTeドット中に含まれる遷移元素Crの原子1個のスピンを対象とした研究を行い、ドット中の単一Crスピンは励起子との交換相互作用を通じて光によりアクセス可能であり、かつ格子歪と強く結合しているという特性を明らかにした。本研究課題は、これらの特性を活かして、Crスピンと格子振動との相互作用の様相を解明し、格子振動によるスピンの変調および制御を実験的に検証することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、フランス国立科学研究センター(CNRS)のネール研究所のL. Besombesらとの共同研究により、半導体ドット中の単一磁性スピンの種々の振舞い、特に格子歪との結合の様態を明らかにし、格子振動によるスピンの変調と制御を実現し、格子振動を媒介としたスピン間の量子情報伝達への道を拓くことを目的としている。今年度は以下の研究を行った。 (1) 前年度に引き続き、CdTe/(Cd,Mg)Teの量子井戸(QW)構造における励起子の零次元閉じ込め構造の作製と光物性測定を行った。これは従来作製して来たCdTe自己形成ドット(SAD)に代わり、QWのCdTe井戸層幅の揺らぎにより励起子を面内でも閉じ込め、零次元に束縛された励起子と単一Crスピンとが相互作用する系を実現するものである。微量のCrを添加したQW試料の顕微フォトルミネッセンス(PL)測定において、単一のCrスピンとの相互作用に伴うと思われる励起子発光線の分裂を観測することに成功した。 (2) 一方、Cr添加のCdTe SADでは、これまで単一Crスピンとの相互作用による励起子発光線の分裂が観測されているが、その割合が非常に低いという問題に直面している。SAD中ではCr原子はさまざまな形で取り込まれている可能性があるため、電子スピン共鳴(ESR)測定によるCrの電子状態の解明を試みた。測定の結果、Crを添加していないCdTe SAD試料においてもCdTe結晶中の欠陥に起因すると思われるESR信号が観測され、その信号強度はCrの添加により増大することが明らかとなった。また、Cr添加SAD試料においては、Cr3+, Cr+と思われる信号が観測され、されにCr+の信号は光励起により増強されることを見出した。これらの結果より、SADの作製過程におけるCdTe結晶中の欠陥の生成がCrの添加により促進され、この欠陥がドット中の励起子発光を阻害する要因となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CdTe SADにおいて単一Crスピンとの相互作用に伴う励起子発光線の分裂が観測される割合が低いという問題を解決する手がかりが得られ、また一方で、SADに代わる試料構造としてCr添加のCdTe/(Cd,Mg)Te QW構造において単一Crスピンとの相互作用に伴うと思われる励起子発光線の分裂を観測することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、励起子と単一Crスピンとの相互作用による発光スペクトルの分裂が高い確率で観測される試料の作製を目指し、表面弾性波(SAW)によるCrスピン状態の変調の観測を試みる。
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