研究課題/領域番号 |
20KK0116
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
吉田 朋子 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (90283415)
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研究分担者 |
東 正信 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 特任准教授 (10711799)
山本 旭 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (30769443)
山本 宗昭 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 特任助教 (50823712)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | X線励起発光 / XAFS / 定量的構造解析 / XAFS測定 / XANES解析法 / X線発光 / 光触媒 / 放射光分光 / 電子分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本提案では,反応中に刻々と変化する固体光触媒活性サイトを抽出し,その場観察するための分析法を世界に先駆けて構築する.具体的には,触媒の局所構造・化学状態解析に有用なX線吸収分光法(XAFS)を活性サイト分析法に発展させるために,化学状態を選別した測定法や定量的解析法を共同開発する.この方法論を電子線エネルギー損失分光法(EELS)に応用し,固体光触媒の活性サイトの分布を定量的,且つ原子レベルで可視化する高空間分解分析法へと発展させる.本提案では,研究代表者を中心としてイタリア側研究拠点に出向き,国際共同研究を強力に推進すると共に,国際的に活躍する若手研究者を育成することも大きな目標としている.
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き,X線で励起した時に放出される紫外・可視光領域の発光(X線励起発光)を検出しながら励起X線のエネルギーを連続的に変化させることによりXAFSスペクトルを得ることを試みた.前年度においてAl2O3などの参照固体材料中の酸素空孔(F+ center)を対象としたXAFSスペクトルが測定されたことから,2022年度は実際の機能性材料への応用展開を図った.具体的には,炭素化シリコン発光材料に対してSi K-edge XAFS(XANES)スペクトルを従来法とX線励起発光法の2通りで測定した.従来法では炭素化シリコン発光材料に混在するSi種とSiO2種の両方のXANESが重畳したスペクトルを示したが,X線励起発光(紫外可視光領域の発光)強度をモニターしながら測定したXANESにはSiO2由来のスペクトルのみが測定されたことから,発光サイトはSiO2種であることも明らかとなった.またこの結果を踏まえて,従来法で測定したXANESスペクトルに対してもスペクトルの足し合わせや波形分離を施すことで,Si種とSiO2種を定量的に区別できることも示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響で,2022年度もイタリアのパドバ大学に赴くことができなかったため,イタリア側チームと連携をとりながら研究を進めた.イタリア側はイオンビーム照射による触媒表面制御にかかわる研究を継続する一方,日本側は,試行錯誤の末,X線励起により誘起される紫外・可視光領域の発光を利用することによりXAFSと同等の微細構造を有するスペクトルを得ることに成功した.この測定の基本コンセプトをほぼ実証できたと考え,2022年度は参照固体材料中の酸素欠陥に加えて,発光材料など機能性材料を対象とした測定を実施し,従来法で測定したXAFSスペクトルとX線励起発光法を応用して測定したXAFSスペクトルの違いを明確に示すと共に,発光サイトなどの機能発現サイトの情報を示すサイト選択的XAFS測定を可能にした.来年度以降に渡航できればイタリアやEU放射光施設での実験に今年度の研究成果をそのまま応用できると考えている.以上のように,実験予定を変更しているが,前倒して実施し重要な成果も着実に得られていることから,概ね順調に実施できていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にイタリア側と日本側で得られた実験データや知見・基本的概念に基づいて,今後はまず以下の研究内容に着手する.これまでの研究において,X線励起発光を応用したサイト選択的XAFSスペクトルの測定が可能になってきた.また従来法で測定したXAFSスペクトルに関してもスペクトルの足し合わせや波形分離を施すことで,定量的構造解析が可能であることが明らかとなった.しかし後者の定量的構造解析については,現段階では,構造既知固体材料のXAFSスペクトルを利用した半経験的な解析手法となっているため,今後はイタリア側研究グループのサポートを得ながら統計的解析法を導入し研究展開を図りたい.また2023年度にはXAFSと同等の情報を与え高空間分解能に優れたEELSに対して,定量的構造解析手法を応用したいと考えている.このため電子顕微鏡を用いたEELS測定に着手し,XAFSとスペクトルを比較するところから検討を始めたい.
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