研究課題/領域番号 |
20KK0133
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
有江 力 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00211706)
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研究分担者 |
児玉 基一朗 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00183343)
柏 毅 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (60766400)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | バナナ / パナマ病 / 疫学 / 生物防除 |
研究開始時の研究の概要 |
ペルーの疑似パナマ病の実態を明らかにし、検診技術、 防除体系を構築することを目的に、ペルー国立農業研究所(INIA)およびラモリーナ国立農業大学(UNALM)と国際共同研究を推進、(1)緊急疫学調査によってペルーの疑似パナマ病およびパナマ病の発生状況を初めて明らかにするとともに、(2)疑似パナマ病の病原を特定、病原の性状を解明し、それに基づいて(3)特異診断技術を確立して疑似パナマ病の拡大防止や新パナマ病の侵入に備え、さらに、疑似パナマ病に対する(4)低環境負荷型防除体系を提案する。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス禍で渡航できなかったペルーに2022年9月に渡航、レースTR4の蔓延でSENASA(ペルー植物防疫所)によって圃場立入が禁止されている北部地区に代わり、中部ワヌコ県ティンゴマリア地域およびリマ市ラ・モリーナ地域のバナナ圃場を訪問、協力機関であるUNALM(国立ラ・モリーナ農業大学)等とパナマ病の発生調査を行った。ティンゴマリア地域5圃場で疑似パナマ病罹病株を採取、罹病組織小片を選択培地に置床、農林水産大臣特別許可の下日本に携行輸入、病原菌の分離を試みた。 罹病組織から18株のFusarium oxysporumを分離した。これらのバナナへの接種試験による病原性検定は実施中である。18株のうち12株について、LAMP法によって全株がパナマ病菌であること、PCR法によって10株がレースSR4、2株がレース1であるとの分子診断結果を得た。rDNA-IGS領域塩基配列に基づく分子系統解析では、上記10株が、すでに報告されているカナリア諸島、アフリカ、中米などのレースSR4株と同一クラスターを、2株が独立したクラスターを形成した。他地域の菌株と同一クラスターを形成したレースSR4菌株はかなり以前にペルーに侵入していたことが想定された。 また、ペルーINIA(国立農業研究所)の許可を受けて、農林水産大臣特別許可の下ティンゴマリア地域5圃場の土壌の輸入を完了、微生物叢の解析を開始した。 さらに、我が国におけるパナマ病の発生調査によって、沖縄本島、奄美大島、関東、四国地域の圃場で罹病株を採取、病原性・レースの確認を開始するとともに、沖縄本島圃場の土壌から分離した各種細菌株のパナマ病菌(宮古島株)に対する抑制活性を検定し、Pseudomonas sp.など、抗菌活性を有する細菌株を見出した。ペルー土壌でも、同様な方法論で生物的防除に適用可能な細菌株が取得できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究代表者および分担者が2020,2021年度に実施予定であったペルーのバナナ栽培地域圃場での疑似パナマ病の調査を2022年度にようやく実施できた。しかし、渡航できなかった間(2021年2月)に北部地域でレースTR4が確認されたため、2022年度の採集は中部地域で実施、実績に記述したようにレースSR4を確認、その由来などを考察できた。 国内研究者およびペルーのINIAおよびUNALM研究者と2回/月程度、zoomによる研究推進会議を継続、研究打ち合わせを行うことで、ペルー国内において、海外共同研究者や海外協力者に調査、採集、分離、接種など研究を分担いただき、研究を推進している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には再度ペルーに渡航、ペルーのバナナ栽培地域圃場、INIA、UNALMおよび日本の研究室において、以下の4項目の研究を実施する。 (1)ペルーの疑似パナマ病の緊急疫学調査:ペルーのティンゴマリア等のバナナ栽培地域圃場で疑似パナマ病の調査を継続、発生状況を記録するともに、罹病植物および土壌を採集する。採集した罹病植物および土壌は、乾燥および低温条件で保存する。 (2)病原の特定、病原の性状の解明:(1)で サンプリングした罹病植物組織から、選択培地等を用いて病原の分離、分子生物学同定、バナナへの接種による病原性および宿主特異性(レース)の検定を継続する。さらに、病原の分子系統学的・ゲノム解析、病原性関連遺伝子群のシーケンシング、遺伝子発現解析、菌糸和合群(VCG)検定等を実施、特異診断技術の確立につなげる。(3)特異的に病原を識別できる診断技術の確立:疑似パナマ病の病原の種や宿主特異性に関わる遺伝子・ゲノムレベルの情報に基づき、診断のために何を特異識別すればよいかを協働で検討、その結果に基づき、UNALMの植物病院をはじめ、検査機関等で容易に 実施可能なPCR法や、現地圃場でも実施可能なLAMP法による特異識別技術を開発する。(4)生物学的防除を含む低環境負荷型防除体系提案:バナナパナマ病の、非病原性F. commune等による生物防除の可能性を、さらに、非病原性F. communeと植物賦活剤(プラントアクチベーター) の併用による防除効果ペルーの温室レベルで検証する。非病原性F. communeの圃場での施用技術を確立する。さらに、ペルー地場生物防除資材を探索・選抜する。
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