研究課題/領域番号 |
20KK0137
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
森山 裕充 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20392673)
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研究分担者 |
野澤 俊介 玉川大学, 農学研究科, 日本学術振興会特別研究員 (00887458)
小松 健 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60451837)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | マイコウイルス / ベータクリソウイルス / 2本鎖RNAウイルス / イネいもち病菌 / 疫病菌 / メコンデルタ / 病原性変動 / 微生物培養 / β₋クリソウイルス / 植物病原菌 / 応用微生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではメコンデルタの農業生産現場における植物病原菌の新たな防除法の開発に寄与すべく、ベトナム国カントー地方の農作物に重大な被害を齎す植物病原菌に感染するマイコウイルスの存在状況およびその性状の調査を行う。マイコウイルス感染は一見して潜在的であるが、実際には宿主菌の菌糸成長速度、空気感染を齎す分生子の形成効率の増減、宿主菌の農作物に対する病原力への影響や、病原性変動による抵抗性の打破などバイオロジカルな表現型変化に加え、種々の殺菌剤によるケミカルコントロールに対する薬剤感受性の変化などを引き起こすことがある。そこでマイコウイルス種について把握し、宿主菌に影響を付与する機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではベトナム国カントー地方の農作物に重大な被害を齎す植物病原菌に感染するマイコウイルスの存在状況を調査し、新たな防除法への寄与を目的とする。2022年3月中旬から共同研究を担当する大学院生と共にカントー大学の研究者達と研究プロジェクトについての打ち合わせと、マイコウイルス探索研究の立ち上げを実施した。滞在期間中に、研究代表者と大学院生により、マイコウイルス概論と、ベトナム採集株イネいもち病菌マイコウイルスの日本国内販売殺菌剤感受性試験に関する研究内容を紹介し、今後の渡航計画と研究計画について現地の研究者Le Phuoc Thanh博士らと協議した。また、2023年1月にキック・オフとなり研究代表者とThanh博士がモデル2として参画するカントー大学技協フェーズ2「気候変動下のメコンデルタ地域における持続可能な発展に向けた産官学連携強化プロジェクト」(当該プロジェクトからの研究費支給は無く、渡航費のみ年1回分支給)の社会実装活動とも発展的に関連させることを目的として、メコンデルタのドンタップ省の複数箇所の地元マンゴー農園を訪問する機会を得て、本科研費研究の対象の一つである薬剤耐性菌として被害を齎すマンゴー炭疽病菌Colletotrichum属のサンプリングルートも確立できた。2023年3月中旬から2~3か月毎に予定している渡航では、現地におけるマイコウイルス探索研究を多検体でも円滑に行うべく実験器具(乳鉢乳棒、耐熱性プラスティックシャーレ)を直接持参するなどの関連実験消耗品の充実化を図りつつ、研究室に所属する大学院生と共に、双方の渡航が実施された時を想定して着々と研究活動を遂行している。2023年度内を目標として、現地に新設された研究棟に、イネいもち病菌、マンゴー炭疽病菌、疫病菌Phytophthora属菌におけるマイコウイルス探索すべく研究環境を急速に立ち上げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【カントー大学との共同研究進捗状況】 2020年11月~2022年12月までは、Thi Thu Nga准教授、Le Phuoc Thanh講師やLE Minh Tuong講師、Le Van Vang学府長とオンラインミーティングを実施し、本研究プロジェクトの4年間の研究概要を確認後、合同研究報告会を実施してきた。2023年3月12日-3月18日に現地に行き、新設された研究棟で、マイコウイルスRNA精製をケーススタディとして、各種実験機器のセットアップにも従事し、実際に薬剤耐性を有するドリアン病原体から高分子RNAゲノムとするマイコウイルスも単離された。次回の渡航日(5月31日-6月8日)、次々回の渡航日(7月23日-7月31日)に合わせて、イネいもち病菌、マンゴー炭疽病菌、その他農作物に被害を与える疫病菌からもマイコウイルス検出を試みる計画を立てた。また、5種の殺菌剤に対する薬剤耐性研究についても着手可能とした。 【日本国内における進捗状況】 イネいもち病菌のメラニン合成系を抑制するトリシクラゾール添加培地におけるMoCV1-Aの各種RNAゲノム遺伝子の相対定量を実施した結果、dsRNA1~5は一様に薬剤濃度依存的に増加する傾向にあった。同薬剤に対する感受性はMoCV1-A感染菌株の方がフリー株よりも薬剤感受性が低い傾向にあり、ウイルス含量変動と宿主菌のトリシクラゾール感受性変化は関係が示唆された。一方、宿主菌側の薬剤抵抗性に関与する遺伝子については、現時点でABCトランスポーター合成遺伝子において、MoCV1-A感染株では薬剤濃度の上昇に応じてその発現量増加が見られた.が、MoCV1-Aフリー株では見られなかった. メラニン合成関与遺伝子に関しても、Scytalone dehydrataseやHydroxynaphtalene reductase合成遺伝子について調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
気候変動で深刻化する疫病菌Phytophthora属やColletotrichum属のマイコウイルスに関しては、疫病菌専門家植松清次氏(元千葉県暖地農業研究センター)と共に現地に行き、マンゴー、ドリアンなど商品価値の高い果物類を対象に疫病菌の分離、それらに感染するウイルス調査を行う。7月26日~28日にLe Van Vang学府長らの主催で開催されるInternational Conference on Bio Protection for Sustainable Agricultureに、安藤哲元カントー大学招聘教授らと共に、森山、植松氏も招待講演者として参加する。 薬剤添加YG液体培地におけるウイルス粒子流出比較: MoCV1-A感染菌株を200 mL YG液体培地で1週間培養後、5種の薬剤を任意の濃度で添加しさらに4週間培養を行い、培養上清を採取し、PVDFメンブレンまたはメッシュフィルターで濾過後、100k G, 1.5hで超遠心分離を試み、沈殿を溶解後、核酸、タンパク質検出を行う。 MoCV1ファミリーにおける浸透圧ストレス応答比較: MoCV1-A, MoCV1-A-a, MoCV1-B, MoCV1-D感染菌株およびそのフリー化株を供試して、高浸透圧に対する応答を簡易的に比較する。0.5 M, 1.0 M KCl添加PDA培地および0.5 M, 1.0 M Sorbitol添加PDA培地を作製し, 5日間培養し, 菌叢変化を観察する。 共免疫沈降によるMoCV1-A CPと相互作用する宿主タンパク質の推定: 2週間YG液体培養したMoCV1-A感染菌体からタンパク質を粗抽出し, MoCV1-A ORF3p抗体, ORF4p抗体を5μL別々に加え4℃, 2hインキュベート後、Protein A AgaroseビーズによりSDS-PAGE, Western 解析する。
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