研究課題/領域番号 |
20KK0142
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (70292860)
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研究分担者 |
荒川 修 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40232037)
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
柳下 直己 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (50434840)
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
太田 貴大 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (30706619)
宇都宮 譲 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60404315)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | カンボジア / メコン川流域 / 淡水フグ / フグ毒 / 養殖 |
研究開始時の研究の概要 |
メコン川流域における淡水フグの有毒性は広く知られているものの、野生の淡水フグにおける毒性の強弱や組成に関する知見は著しく断片的なままである。メコン側流域各国では、地元自治体が危険性を啓発しているにもかかわらず、流域住民のフグ食は止まらず、中毒による健康被害が社会問題化している。本研究は、フグ食中毒被害が顕著なカンボジアにおいて、被害多発地域に位置する新設大学と連携し、淡水フグの種類と毒性の季節変化、毒化機構、ならびに住民のフグ食に対する潜在的な需要を明らかにし、淡水フグの無毒化養殖を試行する。
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研究実績の概要 |
令和4年9月、12月、および令和5年3月にカンボジア・クラチエ州において調査を実施した。「課題1: 淡水フグの毒性変化の実態解明」については、毎月10尾程度のフグ採取を継続するとともに、クラチエ大学の研究協力者とともに現地の淡水フグの体長、体重計測、ならびに写真記録手法を規格化した。その結果、フグ個体サイズと体重に明確なアロメトリー関係を見出した。一方、同所で採取されたフグ個体サイズには著しい個体差も見られ、複数の年級群から構成されていることが示唆された。また、淡水フグ毒の簡易検出キットを用いて現地におけるフグの毒性評価手法を確立するとともに、頻繁に採集される形態的に異なる2種類のフグについて、採取場所や時期、個体サイズによらず、毒性は顕著に異なることが示唆された。「課題2:食物連鎖を通じた淡水フグの毒化機構解明」については、フグ採集場所付近の水生昆虫や無脊椎動物を採取するとともに、淡水フグ個体の消化管内容物を検鏡し、糸状性藻類や漁網の断片、昆虫由来と推定される節足動物の脚部等を確認した。消化管内容物に含まれる細菌の16SrRNA遺伝子配列から細菌組成を調べたところ、門レベルではファーミキューテスおよびプロテオバクテリアが両試料中で優占的に出現するものの、科レベルではクロストリジウム科細菌だけが共通するのみで、消化管内の細菌叢は個体差が大きいことが判明した。シアノバクテリアに近縁な配列としては、真核植物に含まれるクロロプラスト由来のものだけが検出された。「課題3: 淡水フグ食のメンタリティー解明」については、クラチエ近郊の農漁村において、実際のフグ調理の過程を記録するとともに、安全性を確認後、試食により味やテクスチャを検査した。「課題4:食用に向けた無毒化淡水フグ養殖の試行」については、野外で採取した淡水フグをクラチエ大学内の施設で飼育し、成長測定および毒性試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始当初(令和2年10月)から令和3年度末まで、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、渡航を前提とした研究計画を遂行できなかったが、令和4年度になり、ようやく現地調査を3回実施して、進捗状況は改善された。特に、現地において採取した淡水フグの体長、体重計測、ならびに試料の写真記録手法を規格化するとともに、フグのSTXの簡易検査キットによる現地でのフグ毒性の評価手法を確立したことにより、クラチエ大学の協力者自身の調査・研究に対する動機付けの強化につながった。 ABSに準じてフグ試料を日本に持ち込んで詳細に解析することが可能になり、フグの毒性変化に関する知見を得つつある。一方、現状のABS文書には微生物試料の持込に関して未記載のため、特に環境試料の微生物解析が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
課題1については、これまでに採取したフグ個体試料をもとに、成長と毒量の季節的な変動を明らかにする。淡水フグ毒の簡易検査キットのサキシトキシン(STX)に対する検出閾値を求めるとともに、既知量のSTXに対する検査キットの呈色を画像解析によって数値化し、現地におけるフグ毒の定量評価手法を確立する。 課題2については、現地で採取された水生無脊椎動物のDNAバーコーディング解析、および動物体内や環境試料中の細菌群集のアンプリコン解析により、フグの餌候補となる無脊椎動物、およびシアノバクテリアを含む原核生物の多様性を明らかにする。さらに、採集した時期や場所の異なるフグ個体について、合計30尾程度の消化管内容物をDNAバーコーディング解析結果と合わせて、淡水フグの餌生物を明らかにする。また、現地で採取される淡水フグの形態的特徴の分析と遺伝子配列解析を進め、分類的な混乱を整理する。課題3については、現地住民によるフグ喫食に関するこれまでの調査結果を取りまとめるとともに、医療や行政機関による淡水魚の食中毒対応、検疫、流通、衛生管理などの聞き取りを進め、カンボジア・クラチエ州の農漁村における魚食のメンタリティと社会インフラレベルでの受容状況を明らかにする。課題4については、喫食に適したフグの種苗生産を試行する。
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