研究課題/領域番号 |
20KK0145
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 政良 筑波大学, 生命環境系, 名誉教授 (70021722)
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研究分担者 |
石井 敦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90222926)
申 文浩 福島大学, 食農学類, 准教授 (50710216)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 灌漑管理 / ベトナム / 農民参加 / 参加型調整 / 都市化 / 土地利用 / 圃場整備 / 日本の農業構造変化 / 国家目標 / 参加型灌漑管理 / 水管理組織 / 国と農民の役割分担 / 集落機能 |
研究開始時の研究の概要 |
ベトナム農業が社会主義的集団農場制から市場経済へ転換したことで、灌漑用水の管理体制も、農民を基礎とする参加型制度への転換が求められている。本研究は、日本のムラを基礎にする伝統的参加型灌漑管理の経験を、類似の農村構造をもつベトナムに導入しようとする。その際、ベトナム農村における近年の急速な工業化と農業労働力不足という環境条件も考慮し、担い手農業の進展への対応という日本の経験も動員しながら、ベトナムの参加型灌漑管理分野の研究者と共同で、今後あるべき灌漑管理体制の基本デザインの構築を目ざす。
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研究実績の概要 |
ベトナムCPIMの上級研究員のDoan Doan Tuan氏とオンラインでのミーティングを7回行い現地調査の進め方および調査対象地区の概要についての情報収集を行った。以上の議論から、紅河デルタ地域のThai Binh州および中部地域のHa Thin州の大規模水田灌漑地区を調査対象地区とし、R5年4月15~30日に現地調査を行うことを決定した。 また、日本国内において、ベトナムの灌漑管理と比較分析するのに適した大規模水田灌漑管理地区を対象に、以下の現地調査を行った。 1)香川用水地区: ベトナムの灌漑管理と同様に幹線水路を水資源機構(公的組織)が管理し、支線水路以下を土地改良区(農民水利組織)が管理する事例。異常渇水時には香川用水土地改良区が末端の水利組織間の配水を調整することで地区全体に旱魃被害がでないようにしていることが明らかになった。 2)会津宮川土地改良区(受益面積約4400 ha)および会津北部土地改良区(同約4500ha): いずれも1990年代以降に大規模ダムを建設して新たに開発された大規模水田灌漑地区であり、支線水路・末端水路レベルでの水利組織間の配水調整について、土地改良区が平等配水を実現するために強く働きかけていることが明らかになり、土地改良区が地域全体の収量を最大化するために活動する、そのための政策的仕組みづくりの重要性が示唆された。 3) 岡堰土地改良区(茨城県、受益面積約1600ha):用水の反復利用システムの導入によって地区内の平等配水の実現が容易になり、維持管理費の軽減が実現できていることを明らかにした。 4)Doho地区(ウガンダ、受益面積約1000 ha):地区の上流下流での水利費徴収率の分布について分析を行い、幹線・支線・末端のいずれの水路レベルでも下流部で水利費の徴収率が低いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染症のため、ベトナム渡航時の隔離期間が長い状態が続いており、現地調査を行うことができず、進捗状況が遅れている。秋以降、現地調査が不可能ではない状況になったが、研究調査担当者の体調問題等のため海外渡航を見合わせたためR4年度中の現地調査を中止したこともあった。 これを補うため、ベトナムの研究協力者であるCPIMの上級研究員のDoan Doan Tuan氏とのオンラインミーティングを7回行い、研究に関する仮説の共有、現地調査対象地区の情報共有を行った。 また、ベトナムの灌漑管理との比較分析を行うための日本国内の大規模水田灌漑地区の調査に注力した。これについては、農民水利組織である土地改良区や公的灌漑管理組織である水資源機構の役割分担等についての新たな知見を得られており、ほぼ順調に成果を上げている。 全体として、ベトナム現地での各分水地点での流量観測や、実際の農民水利組織へのインタビューが実施できておらず、研究の進捗状況については遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度のオンラインミーティングにより現地調査地区(Thai Binh州、Ha Thin州)の灌漑施設のおおよその情報を得ており、ポイントとなる分水施設や灌漑管理組織への調査項目はすでに作成し、R5年度4月15日~30日の現地調査計画を作成している。今年度はまずここで現地調査に注力する。 その上で、5~6月に再度ベトナムを訪問し、特にHa Thin州の現地調査地区で、公的管理から農民水利組織へと灌漑管理主体を変更したブロックと公的管理のままのブロックとを対象に、流量観測のための機器を設置する。また、Ha Thin州の調査対象地区の大規模貯水池のダム貯水量のデータを入手し、同地区の水資源の不安定性についての評価を行う。 また、ベトナムCPIM研究者との間で日本およびベトナムの灌漑管理に関するセミナーを開催し、双方の灌漑管理に関する課題についての理解を共有する。 また、8月上旬にベトナムCPIMの研究者4~5名を日本にむかえ、日本の大規模灌漑管理地区(水資源機構と土地改良区の共同管理地区である三重用水地区他)の現地調査を共同で行い、公的組織による灌漑管理の日本とベトナムとの違いについて情報交換をして分析を行う。 また、12月に日本側から研究者がベトナムを再度訪問し、Ha Thin州を再度訪問し、公的機関の管理から農民水利組織への管理の切り替えを行った地区を対象に、上記の流量観測結果のとりまとめ・分析を行い、その結果をもとに、農民水利組織の灌漑管理に関する聞き取り調査を行う。
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