研究課題/領域番号 |
20KK0174
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 洋一郎 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (10322033)
|
研究分担者 |
桧垣 正吾 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (50444097)
巽 俊文 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員 (80868232)
野村 幸世 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70301819)
熊倉 嘉貴 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (90517773)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | α線放出核種 / 核医学治療 / アクチニウム |
研究開始時の研究の概要 |
近年動物実験においてα線医薬品の有用性が確認されて以来、現在核医学治療(RI内用療法)の開発が急速に伸展している。半減期が10日であるアクチニウム-225は、所謂“短寿命”α線放出核種と呼ばれ、体内において疾患細胞の殺傷効果を発揮し、急速に消失することから、ヒトにおける核医学治療に適している。アクチニウムは金属元素であり、キレート剤による結合が可能である点で標識反応が容易となる長所を有しており、有用である。しかし加速器による製造に必要なターゲットが国内にないため、従来共同研究を行っているTRIUMF(バンクーバー、カナダ)から譲受して医薬品の標識と動物実験を行う。
|
研究実績の概要 |
短寿命α線放出核種の核医学治療への応用が急務である。本研究では、①短寿命α線核種の効率的な製造・精製技術の開発、②α線核種を用いた医薬品標識技術開発、③α線核種を高速かつ安全に精製・標識する計測制御システムの開発、を実施することによって、今後爆発的に進展することが予測されるα線医薬品開発を推進して画期的な創薬に貢献する。 α線放出核種のうち、半減期が7.2時間であるアスタチン-211と半減期が10日であるアクチニウム-225は、所謂“短寿命”α線放出核種と呼ばれ、体内において疾患細胞の殺傷効果を発揮したあと、急速に消失することから、ヒトにおける核医学治療に適している。近年サイクロトロンによるビームラインを用いた核反応による製造方法が確立し、治療法の開発競争が始まっている。アスタチン-211は、半減期が短いものの、国内加速器施設、小型サイクロトロンによって製造、生成することが可能であり、製造直後にドラッグデリバリーシステム(DDS)に標識することで臨床機関での使用が可能となるが、ハロゲン族元素であることから、DDS標識の化学反応が必要となる。一方でアクチニウムは金属元素であり、比較的シンプルで効率的なキレート剤による標識が可能である。製造の原料となるウラン-233やトリウム-229は使用済み核燃料に含まれるため国内に在庫が無く、海外加速器施設との共同研究で製造する必要がある。本研究事業では、共同研究先であるTRIUMF(バンクーバー、カナダ)に研究者を派遣して補助事業期間中定期的に研究者が駐在して核化学反応と精製方法の効率化について共同研究を進める予定であったが、パンデミックの中海外渡航の制限が生じたため、2022年度は8月、10月の2回に亘ってTRIUMFで製造されたアクチニウム-225を国内研究機関にて譲受したうえで、DDSに標識し、一連の実験を行った。これによって、新規放射性医薬品のコンセプトを実証することを目指した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度もパンデミックのため、連携研究機関であるTRIUMF(バンクーバー、カナダ)との人的交流に支障があった。そこで、令和3年度までにリモート会議、シンポジウムなどを実施して核種情報のアップデートを進め、研究代表者の所属する研究施設の放射線環境整備を行った。令和3年度3月に第一回225kBqのアクチニウム-225をカナダから空輸した上で、国内で標識、担癌マウスを使った動物実験を行った。その結果前立腺がんに結合するペプチドへのキレート剤修飾と、これによるアクチニウム-225修飾及び胃がん細胞に結合する抗体へのキレート剤修飾とこれによるアクチニウム-225修飾の条件を検討することができた。加えて、マウスへの静注により動物実験に必要な放射線量の検討が可能となった。以上のように輸送方法、標識手順、動物実験の工程を一通り実施することができたので、令和4年度にはさらに8月、10月、11月の3回に亘ってアクチニウム-225を譲受する予定となった。しかしながら、8月と10月は製造の都合でキャンセルとなり、11月に0.5MBqとして発送されたアクチニウム-225を受領した。しかしながら、到着したアクチニウム-225の放射活性は0.08Mbqは留まった。しかし、これを用いて担癌マウスモデルを使った実験に加えて、抗体修飾方法の検討、及びフリーアクチニウム-225の体内動態解析を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究最終年度である2022年度には研究者を直接海外共同研究先へ派遣することができなかったので、代替的にアクチニウム-225を海外共同研究機関から譲受して国内にて実験を行うと共に、本研究期間を2023年度に延長した。パンデミックの終息宣言に伴い海外渡航が容易となった時点で、研究者派遣による現地共同研究と、アクチニウム-225譲受による国内実験を平行して推進し、当初の目的である、①短寿命α線核種の効率的な製造・精製技術の開発、②α線核種を用いた医薬品標識技術開発、③α線核種を高速かつ安全に精製・標識する計測制御システムの開発、を達成し、今後爆発的に進展することが予測されるα線医薬品開発を推進して画期的な創薬に貢献する予定である。
|