研究課題/領域番号 |
20KK0197
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
|
研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
土方 美奈子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 部長 (90332387)
|
研究分担者 |
慶長 直人 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 副所長, 副所長 (80332386)
瀬戸 真太郎 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部 免疫科, 科長 (50383203)
引地 遥香 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 研究員 (20829105)
郭 姿君 (GuoTzーChun) 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部 病理科, 研究員 (00813065)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 潜在性結核感染症 / エピジェネティック修飾 / 自然免疫記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
病原微生物の感染やBCGワクチン接種の後に、自然免疫に関わる遺伝子群のゲノムDNAが様々な修飾(エピジェネティック修飾)を受けた状態がしばらく持続し、この状態で次の異なる微生物の感染を受けると、自然免疫による防御反応が増強するという「自然免疫記憶」が提唱され、新型コロナウイルスパンデミックにおいてもその役割が世界的に注目されている。本研究は、潜在性結核感染症(LTBI)に着目し、ベトナムの共同研究者と進めてきているハノイ市医療従事者のコホート研究により、LTBIの末梢血単核球で自然免疫に関わるエピジェネティック修飾が長期にわたり誘導されているかどうかを解明することを目指す。
|
研究実績の概要 |
病原微生物の感染時に、初期の抗原非特異的な宿主防御反応機構として自然免疫が働く。近年、感染やワクチン接種で誘導される免疫関連遺伝子群のエピジェネティック修飾により、次の異なる微生物の感染時に非特異的な自然免疫反応が増強する自然免疫記憶が提唱されている。我々は2007年よりベトナムの共同研究者とハノイ市医療従事者のコホート研究を進めてきており、これまでに498名のインターフェロンγ遊離試験 (IGRA)を行ってきた。本研究では、潜在性結核感染症の末梢血で自然免疫に関わるエピジェネティック修飾が長期にわたり誘導されているかどうかを解明するために、ハノイの医療従事者から血液の提供を受け、IGRA検査に加えエピジェネティック修飾解析を行うことを目指している。しかしCOVID-19対策のためのベトナムの厳格な入国規制を受けた間、日本側研究者がハノイへ渡航して技術移転を行うことができず、さらに、すべての共同研究施設がCOVID-19対応に忙殺され、研究の進捗に遅れが生じていた。 その間に、日本側ではこれまでのベトナムとの国際共同研究の既提供試料を用いて結核とCOVID-19重症化に共通する自然免疫関連遺伝子の絞り込みを進め、I型インターフェロン受容体サブユニット2遺伝子IFNAR2とインターロイキン-10受容体ベータサブユニット遺伝子IL10RBのリードスルー転写産物と結核の関連を見出した。 昨年度、COVID-19の収束傾向に伴いベトナムの入国規制緩和が行われ、技術移転と現地研究者の協力のもと、3月に150名の医療従事者のIGRAが現地病院で実施された他、新型コロナウイルス抗体等測定用の血漿分離、エピジェネティック修飾解析用の末梢血単核球の分離と凍結保存が行われた。またIGRA結果とインタビューで取得された情報の解析が現地研究者の協力で行われ、今年度、凍結保存検体が日本に輸送された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
R3年度まで、COVID-19のために、ベトナムの厳格な検疫、入国規制を受け、訪問が実質上不可能であったために、エピジェネティック修飾解析用の末梢血単核球の分離と凍結保存、新型コロナウイルス抗体等測定のための血漿分離をハノイ肺病院で行うことができず、研究に遅れが生じた。R4年度は、ベトナムが海外からの渡航者の入国規制緩和を実施したことに伴い、日本側研究者がハノイ肺病院を訪問して技術移転を行い、3月に150名の医療従事者から研究参加同意が得られ、現地でのIGRA実施と、新型コロナウイルス抗体等測定用の血漿分離、エピジェネティック修飾解析用の末梢血単核球の分離と凍結保存が実現した。今年度、それらの凍結保存検体が日本に輸送された。COVID-19の影響で現地の研究進捗に遅れが生じている間に、日本側でこれまでのベトナムとの国際共同研究の既提供試料を用いてCOVID-19感染・重症化に関連すると報告された宿主遺伝因子と結核の関連の解析を進め、COVID-19の重症化との関連が最近報告されたIFNAR2-IL10RBハイブリッド受容体をコードする、これら2遺伝子のリードスルートランスクリプトの生成に関わる遺伝バリアント(Mitsui Y, et al. Immunity 56:1939-1954, 2023)が、ベトナム人の結核発症にも関連しており、COVID-19の重症化抵抗性アリルのホモ接合体が、結核発症抵抗性であることを見出した。RNA網羅発現解析からは、Mitsuiらの報告と同様に、ベトナム人結核患者でも遺伝バリアントの遺伝子型によりリードスルートランスクリプト量が有意に異なっていたが、遺伝子型だけでは説明のできない発現量の違いがあり、エピジェネティック解析の重要な候補遺伝子であると考えられる。ハノイの医療従事者検体の遺伝子型解析も終了した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で得られた候補遺伝子のトランスクリプト発現パターンは、潜在性結核感染症から活動性結核の発症の抑制に関連すると考えられ、MitsuiらのCOVID-19の重症化抵抗性の報告とあわせ、感染症の制御に関わる宿主因子として重要である可能性がある。今年度日本に輸送された、現地で収集された医療従事者からの末梢血単核球検体などを用いて、エピジェネティック修飾解析を進める。得られたエピジェネティック修飾状態の違いは、遺伝子型、RNA発現、現地研究者によってインタビューで取得された情報とあわせて解析する。
|