研究課題/領域番号 |
20KK0209
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平石 典子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20567747)
|
研究分担者 |
林 文晶 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (00450411)
土山 奈美 (高篠 奈美) 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (40803193)
山本 志織 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 医員 (50986205)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | 固体NMR / 溶液NMR / バイオガラス / フッ化物 / 再石灰化 / エナメル質 / 象牙質 / X線回折 / 固溶体 / ストロンチウム / 電子顕微鏡観測 / XRD解析 / バイオグラス / 生体活性ガラス / 固体核磁気共鳴法 |
研究開始時の研究の概要 |
医療技術が進んだ今日でも、むし歯治療は「削って詰める」という旧来の手法から進展を見ないままである。う蝕による欠損部位を、メタル、レジンなどよる充填で修復した場合、これらは、生体不活性材料であり、生体中で生体組織と結合することも吸収されることもない。やや進行したむし歯部位を、生体活性ガラスにて充填し、ガラス粒子表層に生体ハイドロキシアパタイト類似のミネラルマトリックス形成・成長を期待し、再石灰化機能で自己防御あるいは自己修復するアプローチ海外協力者と構想を練っており、本課題で、生体活性材料の新規改良、その性能の評価を共同で実施し、進行したう蝕部位の保存療法確立を加速させる。
|
研究実績の概要 |
バイオガラス由来のフッ化物の歯質強化および脱灰抑制の作用を調べるために、固体NMRと溶液NMRを用いて、フッ化物剤の有効フッ素状態を調査した。19F固体核磁気共鳴(NMR)に関しては、外部施設(早稲田大学物性計測センターラボと国立研究開発法人物質・材料研究機構)にて行った。とくに国立研究開発法人物質・材料研究機構では、60KHzのスピンにて19F固体NMRを実施することが出来た。高濃度、象牙質、エナメル質に対するフッ化物の反応を解析した。使用したフッ化物製剤は、i) 2%中性フッ化ナトリウム(N-NaF)、ii) 2%酸性フッ化ナトリウム(A-NaF)、iii)フッ化物徐放のバイオガラスを、エナメル質・象牙質粉末試料である。反応により、フルオロアパタイトとCaF2が生成することが確認された。特に酸性でエナメル質を溶解しやすく、他の製剤よりも強いフッ化物生成のシグナルを示した。バイオガラス由来のフッ化物は低濃度ではあるが、反応性のフルオロアパタイトが確認できた。また、研究分担者の施設にて、19F溶液NMR測定を実施し、反応性のフッ素イオンが各種バイオガラスからリリースしているかを評価した。またストロンチウムイオン放出する再石灰化誘導機能のあるバイオガラスを対象に、ICP発光分光にて濃度測定後、再石灰化誘導を、歯髄幹細胞(hDPSCs, human dental pulp stem cells)用いて、細胞への影響を評価すべく、Srイオンに注目した実験系を継続しており、石灰化測定効果を評価中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国研究協力者とは、遠隔会議などでプロトコール作成・確認行い、測定結果などの評価を行った。初期エナメルう蝕(white spot lesion)のアパタイトの組織的修正などは十分な知見が得られ、英国ロンドンクイーンメリー歯学部歯科材料学Robert Hill教授らの研究チームに、8種類の生体活性ガラスの提供を受けた中で、フッ素徐放性のバイオグラスの応用が可能であることことは判明したが、これを如何に臨床的に使用するかは議論を重ねることになった。そこで着目したのは、唾液中に含まれるスタテリン の働きである。これはアパタイトに対して強い吸着能を示すことによりペリクルの形成や、エナメル質表層の再石灰化に関与しているが、人工的な生成は困難である。代替として、生体適合性バイオポリマーであるポリ-γ-グルタミン酸(PGA)を使用することを検討した。PGAは安定したイオン性複合体を形成するか、遊離Ca2+の貯蔵庫として働くことが示唆されている様々な分子量の生体高分子であり、水質汚染除去、薬物デリバリー、医療用医薬品など、様々な科学分野に応用されている。国内で購入できるルートも確立したため、2024年度の英国にての共同実験の課題に加えたく予備実験中である。
|
今後の研究の推進方策 |
外部施設・国立研究開発法人物質・材料研究機構では、60KHzのスピンにて19F固体NMRを実施することが出来た。フッ素のバックグランドによる影響があるものの、濃度がある程度高い使用では、そのスペクトルから波形分離が可能で、フルオロアパタイトとフッ化カルシウムの同定評価が可能であった。外部受託費用を工面し、必要に応じ依頼する。分担者所属施設では19F溶液NMRが可能であるため、フッ素徐放バイオガラスから溶出液の精査を行う。2024年4月~5月にかけて英国ロンドンクイーンメリー歯学部歯科材料学にて滞在、これまでの各自実験結果の確認や、バイオガラスの臨床での最適利用を検討する。用途としては、Toothpastes、Varnishes、Dental composites、Bone Graftが考えられるが、今回、唾液中に含まれるスタテリン の唾液ペリクル機能を模倣した、ポリグルタミン酸(PAG)の併用を本格的に着手する。 英国研究協力者チームは2016年に、エナメル質表面への一次吸着タンパク質としてPGAとスタテリンの有効性を比較している。PGAは粘度が高いため、エナメル質をコーティングし、唾液分泌のような保護層を形成する可能性があると論じているが、エナメル質表面への結合を促進する可能性があるが、粘度・分子量と、安定したイオン性複合体を形成するか、遊離Ca2+の貯蔵庫として働く関係性を精査する必要がある。また2次カリエス抑制効果として、バイオガラスを配合したレジンやセメントとして、深い窩洞に使用できる材料の評価も継続して行う。英国研究協力者チームでは、マイクロCTの精度を向上させた、X-ray Microtomography を所有しているため、2次カリエス抑制効果、さらにう蝕罹患部の再石灰化効果を精査できる為、現地での研究を進める方針である。
|