研究課題/領域番号 |
20KK0263
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小林 秀樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー代理 (10392961)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | 北方林 / 永久凍土 / 温室効果ガスフラックス / 土壌動態 / 北極域温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
北半球高緯度地域の温暖化は地球平均温度の約2倍の速さで進んでおり、今後もその傾向が進むと予想されている。しかし、温暖化にともなう永久凍土の劣化や融解とそれに伴う土壌中有機物の分解促進により大気中への二酸化炭素放出の増加が懸念されているものの、温暖化による森林の成長増進という正の効果の側面もあり、どちらがより寄与するかについてのコンセンサスは得られていない。また、その空間的な実態把握や予測モデルの開発も進んでいない。本研究では、アラスカ大学フェアバンクス校との国際共同研究により、森林生態系における凍土融解・劣化と森林生態系の生存環境の関係解析を、面的な関係性として理解することを目的としている。
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研究実績の概要 |
2022年度は、共同研究先であるアラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センターに5月から11月まで滞在し、現地共同研究者との打ち合わせを行いながら、現地サイトでの調査を進めた。6月から9月にかけて、2週間毎に観測サイトを訪問して調査を実施した。現地の森林な樹冠のカバーが20%以下で林床植生の航空機ハイパースペクトル画像に対する寄与が無視できないため、現場レベルで林床植生の分光スペクトルを取得するとともに、葉のサンプルを取得し形質情報の季節変化を定量化した(クロロフィル量は定量できなかったが、代替情報として、葉の窒素、炭素量を計測した。)。7月にはNASAの航空機観測キャンペーンに参加し、航空機の飛来に合わせて地上レベルでの分光スペクトル情報を取得した。これらのデータをあわせて林床の構造と季節変化の関係性を解析した。その結果、林床の状態によって多様な季節変化を示すことが明らかになった。特に地衣類や苔が優先している林床では植生指数などの緑度を観測する指標が夏場にかけて減少する場合があることがわかった。また、林床の草本の中でもクラウドベリーという種の季節変化が林床の景観スケールでの季節変化に大きく寄与していることがわかった。さらに、航空機ハイパースペクトル画像データと林床植生のスペクトル情報を用いて教師付き分類で林床植生の空間マッピングを試行した。初期的な結果ではあるものの、林床の乾燥度に応じた林床植生の分布と樹木分布が明らかとなった。これらの結果は、年度末に開催された国際学会で成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、COVID19の感染蔓延も落ち着き、ほぼ予定通り春から秋まで現地に滞在して現場での調査と共同研究者との打ち合わせを進めることができた。春先から秋にかけて、リモートセンシングデータの精度検証用及びアルゴリズム学習用のデータを取得し、年度の後半には航空機データに適用して林床植生、コケ及び樹木分布のマッピングに成功した。得られた結果は、まだ初期的なものではあるものの、目視による検討の結果、調査地周辺の永久凍土の分布や地面の乾燥度に概ね対応した分布が推定できているものと考えられた。また、得られた結果の一部については国際会議で成果を発表することができた。当初は、進捗がやや遅れ気味だったものの、現地での調査やリモートセンシングデータの分析については順調に進められた。その一方で、解析をすすめる中でリモートセンシング解析の結果については、さらに精度検証などの検討を進める必要があると考えており、申請書執筆時に想定していた、他地域への拡張解析や凍土モデルによる解析は難しいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、夏季に1週間程度現地を訪問し、共同研究者との打ち合わせの機会を持つほか、航空機データによる解析結果の確認のため観測サイトを訪問する。これまでのデータ解析の状況から、今回のリモートセンシングデータ解析で得られた樹木、林床植生、コケの分布マッピングの結果については、アルゴリズムのさらに改善や精度検証が必要との結論に至った。このため、2023年度は当初予定していた他地域への拡張解析や凍土モデルによる解析に進むのではなく、引き続きリモートセンシングデータの解析を進め、論文の執筆など成果を取りまとめることに注力することにする。
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