研究課題/領域番号 |
20KK0305
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 直史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10391947)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 反水素原子 / 微細構造 / ラムシフト / マイクロ波分光 / ミューオニウム / 反水素 |
研究開始時の研究の概要 |
反水素原子やミューオニウムといったエキゾチック原子の X バンドマイクロ波での分光を行う。低エネルギーの反水素やミューオニムのビームに対応した分光装置を開発して,ミューオニウムのラムシフトおよび微細構造,反水素原子の微細構造についてこれまでより高精度の分光を行い,束縛状態 QED の精密検証や新しい物理の探索を行う.
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研究実績の概要 |
反水素原子ビームの強度が微細構造分光実験を遂行するには不足していることが明らかとなった.強度改善のため,反陽子トラップと陽電子蓄積装置の改良に注力し分光実験は一時休止となった.その間に,微細構造分光用空洞共振器の最適化とシミュレーションを進めた.基課題で開発していたラムシフト分光用のマイクロ波印加装置と違って,微細構造分光にはそのおよそ10分の1の波長のマイクロ波を用いる.この波長は,想定されるビーム径に近くなってくる.そのため,三次元の電磁場計算コードを用いて,共振器内で高次の電磁波モードの電磁場分布がビーム位置に重なる適切なものとなるように設計する必要があった.ビームサイズと空洞共振器内の電磁場の分布を具体的に取り入れたモデルを構築し,反水素およびミュオニウムについて予想されるスペクトルを代表する延べ22点の周波数についてモンテカルロシミュレーションを行った.これにより,実験で得られる微細構造間遷移周波数の測定精度を見積った.精度を決める系統要因については,上記に加えてビーム入射位置のずれも測定精度に大きな影響を与えることがシミュレーションからわかった.現状での想定精度は,500ppmになり,他実験での報告値より70倍の高精度となる見積りである. また,反水素ビーム強度改善を進めるうちに特にビーム軸方向について新たに判明した条件を分光装置設計に反映すると,よりコンパクトな形状の共振器にできることがわかった.これは既存のビームラインにも合致し都合がよい.この新たな形状の空洞共振器で得られる測定精度についても同様のシミュレーションを進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度に反水素原子ビームの強度の不足が判明し,昨年度のビームタイムでは反水素原子ビーム増強のための反陽子トラップの導入と陽電子蓄積効率改善に費し,分光実験の組込みと実施については一時休止とした.装置製作についても分光装置組込みの検討が済むまで一時中断となっている.その間を利用して,反水素ビーム生成実験にって明らかになったビーム形状をもとに,より効率的な微細構造間遷移を起こせるよう空洞共振器の形状について再検討を行った.ビーム軸方向に縮小して,より強い振動電場を得られる形状とした.
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今後の研究の推進方策 |
反水素原子ビームにあわせて形状を最適化した空洞共振器を製作し,スイス側の共同研究者と夏を目処に現状でのテスト実験を行う予定である.その後、反水素またはミュオニウムでの測定に移る。
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