研究課題/領域番号 |
20KK0315
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大洞 光司 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10631202)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | 人工酵素 / 生体触媒 / 物質変換 / 反応場 / 金属ポルフィリノイド |
研究開始時の研究の概要 |
本国際共同研究では、基課題「基盤研究(B):炭素-水素結合を自在に官能基化する人工金属酵素の合理的開発」において開発するヘムタンパク質と人工金属錯体から構成される人工金属酵素に対し、利用するタンパク質の拡張を目的とし、海外共同研究者独自の疎水性空孔タンパク質と本申請研究者独自の人工金属錯体を組み合わせた新しい高活性・高選択的な人工金属酵素の開発を実施する。本申請研究者自身が海外共同研究者のグループで実験に従事し、疎水性空孔タンパク質の独自技術を習得することで研究の飛躍的な加速が期待される。
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研究実績の概要 |
研究者のグループで実験に従事し、疎水性空孔タンパク質の独自技術を習得することで研究の飛躍的な加速が期待される。 触媒反応の高活性・高選択性の制御は現在の低分子モデル錯体のみを用いた錯体化学や分子触媒の化学では達成困難であり、金属酵素で巧みに用いられているタンパク質マトリクス(反応場)の寄与の重要性が示唆されている。しかし、タンパク質から構成される反応場を自在に設計・改変して活性種を制御し、目的の機能を発揮する人工金属酵素を創出した例は非常に限定的であり活性の高いRh等の貴金属を使った数例が報告されているに過ぎない。基課題を含めた本研究では、より安価な金属であるMnやFeで、タン パク質の反応場を精密に制御し、困難な反応を立体・位置選択的に進行させる点で非常に大きな意義がある。本国際共同研究では、基課題において開発する人工金属酵素の設計、調製手法を、海外共同研究者独自の疎水性空孔タンパク質に適用し、新しい高活性・高選択的な人工金属酵素の開発に取り組み、飛躍的な発展を狙う。 本年度は、昨年度に引き続き、日本側で人工金属酵素のための新たな金属錯体の調製を実施し、それを渡航先であるオランダに持ち込み、タンパク質と組み合わせて評価を実施した。C-Hのアミノ化やイミンの還元反応に活性を示す人工金属酵素が得られ、今後、さらなる活性向上や選択性向上に向けた方針を決めることができた。また受け入れ先の海外共同研究者やそのグループメンバーと綿密なディス カッションを行い、来年度以降の渡航に向けた準備も行った。一部の成果は、国際学術誌に学術論文として発表し、また学会等で発表を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究者のグループで実験に従事し、疎水性空孔タンパク質の独自技術を習得することで研究の飛躍的な加速が期待される。 触媒反応の高活性・高選択性の制御は現在の低分子モデル錯体のみを用いた錯体化学や分子触媒の化学では達成困難であり、金属酵素で巧みに用いられているタンパク質マトリクス(反応場)の寄与の重要性が示唆されている。しかし、タンパク質から構成される反応場を自在に設計・改変して活性種を制御し、目的の機能を発揮する人工金属酵素を創出した 例は非常に限定的であり活性の高いRh等の貴金属を使った数例が報告されているに過ぎない。基課題を含めた本研究では、より安価な金属であるMnやFeで、タンパク質の反応場を精密に制御し、困難な反応を立体・位置選択的に進行させる点で非常に大きな意義がある。本国際共同研究では、基課題において開発する人工金属酵素の設計、調製手法を、海外共同研究者独自の疎水性空孔タンパク質に適用し、新しい高活性・高選択的な人工金属酵素の開発に取り組み、飛躍的な発展 を狙う。 本年度は、昨年度に引き続き、日本側で人工金属酵素の新たな金属錯体の調製を実施し、それを渡航先であるオランダに持ち込み、タンパク質と組み合わせた実験を実施した。C-Hアミノ化反応やイミン還元反応に活性を示すいくつかの人工金属酵素が得られた。また受け入れ先の海外共同研究者やそのグルー プメンバーと綿密なディスカッションを行い、来年度以降の渡航に向けた準備も行った。コロナ禍は落ち着いたが、当初の予定より滞在が遅れているため全体的な研究の進展が後ろ倒しになっている。来年度以降は、より研究が円滑に進むよう工夫する。
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今後の研究の推進方策 |
基課題では、難度の高い物質変換反応に触媒活性を示す人工金属酵素の開発を目的とし、ヘムタンパク質と人工金属錯体を組み合わせた系を構築している。今年度は昨年に引き続き、実際に渡航し、疎水性空孔を有する非ヘムタンパク質であるLmrRに調製した金属錯体を取り込ませ基課題で提案している人工金属酵素の合理的設計の拡張にトライした。新たに調製した人工金属酵素は、難度の高いC-H結合活性化反応に有意な活性を示さなかったが、反応の進行しやすい分子内C-Hアミノ化反応に活性を示した。選択性は見られないため、金属錯体が安定に取り込まれているかは不明であるが活性の向上は確認されている。今後、さらなる金属錯体の探索とタンパク質の変異導入の双方からよりより活性の高い人工金属酵素が構築できると考えている。基課題で確立した分子動力学計算を用いた変異体設計を利用し、実際に調製して、評価を進めたい。また別の疎水性空孔タンパク質であるリポカリンについても利用を検討する。予備的ではあるが光増感色素を安定に固定化することができ、イミンの還元反応に活性があることを見出している。来年度もオランダに滞在し、タンパク質への変異導入による最適化を進めたい。これに向けて、十分な量の金属錯体や色素を調製する。特に選択性の発現に挑戦したいので、多くの変異体を調査できる評価システムを確立したい。得られた成果は積極的に国際学会や学術論文として発表する。
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