研究課題/領域番号 |
20KK0330
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
狩野 旬 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (50375408)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | 強誘電体 / バンド構造 / 電気分極 / 角度分解硬X線光電子分光 / 半導体物性 / マルチフェロック |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は,強誘電性の起源となる電気分極の成り立ちについて,フォノンと電子構造の双方からの議論を可能とし,デバイス開発の重要なマイルストーンとなる国際共同研究を実施するためのものである。申請者と海外共同研究者であるJanolinが協同し,強誘電性半導体物性の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
今年度は研究代表者が仏研究期間に長期滞在し,(1) ニオブ系層状ペロブスカイト誘電体(粉末),(2) チタン系強誘電体(薄膜)の紫外ラマン散乱実験,および(3) 鉄系マルチフェロイック物質(単結晶)の磁場中X線回折実験を行った。1については,層間のイオン種を変えたものを合成したが,紫外光励起のラマンではスペクトルがレーザー光の強度,波長で変化する様子が観測された。これは主に不純物準位形成によるものであると仮定し,より長波長光源での実験を行い両者を比較した。その結果,ニオブ系層状ペロブスカイトには禁制帯内に複数の不純物バンドが形成され,これが層間のイオン種違いによる変化する様子が明らかになった。半導体物性が大きく変化することを示唆したものであり,別の紫外光電子収量分光でも不純物準位が同定されるだけでなく,光電子生成量が変化することがわかった。2については,薄膜であるため表面敏感である紫外ラマンが有効である。我々の試料において,単結晶基板上の薄膜の結晶性が良くないことが判明した。その結果は速やかに合成グループにフィードバックし,現在新しい薄膜試料合成を行っている。新サンプルができ次第,再度紫外ラマン,他の電気測定を行い,放射光を用いた光電子分光を行って傾斜したバンド構造の観測を行いたい。3については,鉄イオンの電荷秩序化に伴い形成された格子が磁場印加により歪む現象を捉えるものである。これまでカスタムメイドした磁場印加セルを用いて実験を行ってきたが,磁力強度が十分でないことがわかったため,現在より強力な磁場印加可能なセルを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍から解放され,ようやく海外研究機関での実験を本格開始させることができたが,コロナ禍に実施不可能だった実験が多くあるため,1年間の期間延長申請を行った。それで十分補完できると考えているが,試料・実験装置が十分ではないことがわかり,その改良に時間を費やす必要が生じている。よって「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の研究計画に記した実施項目は全部で8あり,今年度推進するべき残りは以下の3項目あった。(1)傾斜バンド構造の完全観測 (2)紫外ラマン (3)単結晶合成 ※3については当初バルクで試みていたが単結晶薄膜で対応。 2についてはすでに稼働中であり,一定の成果が得られている。しかし3に関連することとして2を用いた実験により3の試料合成が不十分であることが判明した。現在新サンプル合成を行っており,でき次第1を日本国内の放射光施設で行う。
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