研究課題/領域番号 |
20KK0331
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中茎 隆 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (30435664)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
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キーワード | DNAコンピューティング / 多層パーセプトロン / 人工分子回路 |
研究開始時の研究の概要 |
生体分子で構成されるマイクロサイズの分子ロボットは、様々なナノ技術が統合された知的システムである。医療分野での応用が期待されている分子ロボット技術の社会実装を加速する上で、複雑な情報処理を行うプログラム可能な人工分子回路の実用的な設計法が求められている。本国際共同研究では、人工分子回路の理想的なアナロジーとして、細胞内シグナル伝達系を据え、制御理論を基盤とする基課題に、シグナル伝達系の動作原理とマイクロデバイス技術を融合した分子多層パーセプトロン回路の開発を行う。
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研究実績の概要 |
生体分子で構成されるマイクロサイズの分子ロボットは,様々なナノ技術が統合された知的システムである。医療分野での応用が期待されている分子ロボット技術の社会実装を加速する上で,複雑な情報処理を行うプログラム可能な人工分子回路の実用的な設計法が求められている。本国際共同研究では,人工分子回路の理想的なアナロジーとして、細胞内シグナル伝達系を据え,制御理論を基盤とする基課題に,シグナル伝達系の動作原理とマイクロデバイス技術を融合した多層パーセプトロン回路の開発を行う。具体的には,DNAコンピューティング技術をベースに,DNA鎖間の結合・解離反応を設計し連鎖させる反応系(以後,DNA回路)に多層パーセプトロン演算を実装することを目指す。前年度にシミュレーションレベルで進めた単純パーセプトロン回路の基礎検討を踏まえ,今年度は次の課題に取り組んだ。 (1)リーク反応などの副反応に頑強なDNA回路設計の実験レベルでの検討:本研究で設計すべき多層パーセプトロン回路は大規模になるため,副反応に頑強なDNA回路の設計法を考案することが本質的に求められる。前年度の基礎検討において,設計法のシミュレーションレベルでの有効性は確認されたため,今年度は実験レベルで検証に着手した。現在までに実験・検証方法を検討しつつ,DNA回路の再設計とデータ取りを続けている。 (2)再生化機構の実験レベルでの検討:単純パーセプトロン回路は学習のために繰り返し反応場に与えられる入力刺激に対して応答する機構(再生化機構)が必要となる。DNA回路設計の自由度を拡大すべく,RNAを融合した設計法と再生化機構への応用について,現在までに実験レベルでの検証を続けている。 (3)マイクロ流体デバイスによるパーセプトロン回路の実現方法の検討:上記(1-2)について,試験管での実験と並行して,マイクロ流体デバイス上での評価方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020-2021年度の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により,渡航時期が大幅に遅れた。2022年5月末の渡航開始後,国際共同研究を推進している。 (1)リーク反応などの副反応に頑強なDNA回路設計の実験レベルでの検討について:DNA回路設計では,数理モデルによって表現された反応系を,DNAの塩基配列レベルで表現する必要がある。塩基配列設計には実験レベルでの試行錯誤が必要となるが,国際共同研究者との議論により着実に前進している。 (2)再生化機構:RNAを融合した設計法について,明らかにする必要がある基礎検討項目が多数あり,それらについて一つ一つ,国際共同研究者との議論により解決しながら進めている。 (3)マイクロ流体デバイスによるパーセプトロン回路の実現方法の検討:国際共同研究者が考案したマイクロ流体デバイスの仕様や性能について,多角的な視点から知識を得ることができた。 以上,検討は順調に進んでおり,上記に関連して1件の学術論文が投稿済みであるが,投稿予定の学術論文が執筆中であるため,進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月に帰国予定であるが,前年度から着手している検討事項を推進する。メール,テレビ会議による議論に加えて,必要に応じて短期での訪問を計画する。 (1)リーク反応などの副反応に頑強なDNA回路設計の実験レベルでの検討について:試験管レベルでの検討を完了させ,マイクロ流体デバイス上での実験検討を行う。得られた結果は,適宜,学術論文として発表する。 (2)再生化機構:試験管レベルでの検討を完了させ,マイクロ流体デバイス上での実験検討を行う。得られた結果は,適宜,学術論文として発表する。 (3)マイクロ流体デバイスによるパーセプトロン回路の実現方法の検討:帰国後は,所属機関のラボでもマイクロ流体デバイスを使った実験系が稼働できるように実験環境を整備する。
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