研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
細胞運動は、2次元平面あるいは3次元空間の細胞を用いて解析されてきたため、単純な解析系が望まれていた。研究チームは、細胞が1次元ファイバー上に接着し運動することを見出し、また、申請者は、I-BARドメインを持つIRSp53が、1次元の細胞運動に関与する突出膜の構造形成を担っていることを明らかにしてきた。さらに、IRSp53が、核と細胞膜を結びつけ、核の移動を担うことを見出した。本研究で、この知見を発展させ、1次元、2次元、3次元の細胞の突出膜形成と核の移動を結びつけ、細胞運動を駆動する分子機構を比較し、解明する。さらに、これらの細胞運動を統合して理解する理論を開発することを試みる。
1次元、2次元、3次元運動の実験的解析米国共同研究チームでは、直径100 nm程度以上のポリスチレンファイバーをメッシュ状に編み込み、細胞外基質の繊維に相当する太さの人工繊維を得ることができる。研究では、米国共同研究先の作成したポリスチレンファイバーに、申請者らが渡航前に作成したIRSp53や関連因子のノックアウト細胞などを用い、米国共同研究先にて申請者と共同で1次元の細胞外基質での細胞運動の性質、特に、細胞膜と核の連結機構、を顕微鏡観察した。Haloタグアクチンを導入することで、アクチン重合速度を測定し、1次元では重合速度の亢進が見られることがわかった。1次元、2次元、3次元運動の理論的解析これまでの細胞運動の理論的な研究では、細胞は2次元の粘着性の平面膜に受動的に接着するものとして扱われてきた。したがって、本研究のような1次元の細胞外基質の細いファイバーに細胞が接着することは考慮されていなかった。一方で、高い膜曲率が、細胞の突出構造をどのように誘導するかについて理論的な考察によれば、細胞膜の細胞突出膜や陥入などの曲率構造に応じて、細胞内の分子集合が制御され、ついでアクチン細胞骨格が再構成され、細胞膜の突出膜が連続して形成され伝播する。本年度は、理論的考察を進め、細胞膜にかかる張力が突出膜形成に必要であることがわかってきた。この張力は細胞内のアクチン重合のみならず、ミオシンなどの分子モータによって誘導されることがわかってきた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの成果を論文に発表に成功し、当初目的の通り進んでいることを示した。
一定の成果を見たので、今後は、細胞突起の伸長だけでなく、その切断などへ展開していく予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Science Advances
巻: 9 号: 17
10.1126/sciadv.adf5143
Nature Reviews Molecular Cell Biology
巻: 24 号: 2 ページ: 81-82
10.1038/s41580-022-00555-x
Advanced Science
巻: 10 号: 7 ページ: 2207368-2207368
10.1002/advs.202207368
生化学
巻: 94 号: 4 ページ: 585-589
10.14952/SEIKAGAKU.2022.940585
Sensors and Actuators B: Chemical
巻: 374 ページ: 132698-132698
10.1016/j.snb.2022.132698
Applied Physics Express
巻: 15 号: 10 ページ: 107001-107001
10.35848/1882-0786/ac8f17
PLOS ONE
巻: 17 号: 7 ページ: e0271003-e0271003
10.1371/journal.pone.0271003
PLOS Genetics
巻: 18 号: 6 ページ: e1010264-e1010264
10.1371/journal.pgen.1010264
Membranes
巻: 12 号: 2 ページ: 181-181
10.3390/membranes12020181
http://www.naist.jp/pressrelease/2023/03/009745.html