研究課題/領域番号 |
20KK0355
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中尾 玲子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (20582696)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2022
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 体内時計 / 骨格筋 / 冬眠 / 概日リズム / プロテオーム |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類は、冬眠、休眠といった能動的かつ全身性の低代謝・低体温を誘導する機構により、低温環境や飢餓といった極限状態を乗り切ることができる。基礎代謝量の多い骨格筋の代謝抑制は効率的な冬眠の導入と消費エネルギー節約に必須であると考えられる。しかし、冬眠動物における代謝抑制の分子メカニズムは不明である。本研究では、冬眠動物の中でも体温を高く保ったまま冬眠する、つまり代謝酵素の活性抑制のために低体温を利用できないクマに着目し、クマ血清が体内時計の制御を介してヒト筋細胞の代謝を抑制する可能性とその機構の解明を目指す。
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研究成果の概要 |
冬眠動物の骨格筋におけるエネルギー代謝の適応メカニズムを明らかにすることを目的として、スウェーデンに生息する野生のヒグマから夏、または冬眠中に採取した血清を、C2C12マウス筋管細胞の培地に添加し酸素消費量を測定した。糖質を基質とした呼吸による酸素消費量は冬眠クマ血清添加により減少したが、脂肪酸を用いた呼吸には血清の影響は見られなかった。また、冬眠クマ血清は、骨格筋における時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させ、位相を前進させた。冬眠中のクマ血清には、骨格筋の糖代謝を抑制し、体内貯蔵栄養素を節約する作用があること、体内時計機構の修飾が冬眠中の代謝制御に関与することが示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は、冬眠中のクマの血清に、骨格筋を始めとした末梢組織における体内時計の機能を改善し、無駄なエネルギー消費を抑制する成分が含まれる可能性があることを示すものである。近年、運動不足やバランスの悪い食事だけでなく、夜型生活や睡眠障害といった生体リズムの乱れが筋萎縮や代謝異常のリスク要因であると考えられるようになってきている。本研究の成果はこれらの疾患の予防・改善法開発のための新規ターゲット分子探索のみならず、臓器移植や救急搬送、長期宇宙フライトなどにおける人工的な低代謝の誘導法を開発するための糸口となり得る。
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