研究課題/領域番号 |
20KK0362
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河部 剛史 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50834652)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
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キーワード | T細胞 / 恒常性 / 制御性T細胞 / CD4 T細胞 / 免疫記憶 / 感染免疫 / 自己免疫疾患 / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
CD4 T細胞は外来抗原特異的獲得免疫反応に必須のリンパ球である。これに対し申請者は、自己抗原特異的に産生され恒常的に準活性化状態を呈する「MP細胞」を同定し、その極めて特徴的な自然免疫機能を発見した(Sci Immunol 2017)。本研究は、同細胞の質的特異性や分化・活性化機構を詳らかにするとともに、MP細胞と古典的抗原特異的メモリー細胞との差異やMP-DC-Treg間相互連関を解明し、MP細胞を取りまく免疫細胞ネットワークの全容解明を図るものである。
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研究実績の概要 |
CD4 T細胞は外来抗原に対する獲得免疫応答に必須の役割を果たすリンパ球である。すなわち病原体感染時、外来抗原特異的TCRを有するナイーブT細胞は活性化しエフェクターさらにはメモリー細胞へと分化し、病原体を生体内から排除する。これらの「古典的」T細胞集団に加え、我々は、CD4 T細胞中に、ナイーブ細胞が自己抗原を認識することにより恒常的に産生され、感染時には自然免疫的な様式で生体防御に寄与する「Memory-phenotype cell(MP細胞)」を報告した(Sci Immunol 2017, Nat Commun 2020)。そこで本研究では、世界最大の研究施設である米国NIHとの共同研究により、MP細胞の鑑別マーカー、質的特異性、分化・活性化機構、免疫学的機能を明らかにし、さらには同細胞を取り巻く免疫細胞ネットワークの全容を究明することを目的とした。 昨年度までの研究の結果、我々は、MP細胞鑑別マーカーとしてIL-7Ra、Sca1、Bcl2を同定していた(Front Immunol 2022)。これらのマーカーを用い、MP細胞自身も複数のサブセット(IL-7Ra(lo) Bcl2(lo), IL-7Ra(hi) Bcl2(lo), IL-7Ra(hi) Bcl2(hi))に分類されることが分かったため、本年度はこれらMP細分画の産生・維持・分化・活性化機構や免疫学的機能などを解析した。また、MP細胞のもつ潜在的炎症惹起能は定常状態下においてはTreg、DCにより厳密に制御されていることも判明しつつある。 次年度も今年度の研究を継続し、MP細胞と「古典的」メモリー細胞との質的差異、MP細胞のheterogeneityと恒常的分化機構、自己免疫疾患惹起能などの究明にむけて、NIHとの国際共同研究のさらなる発展を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(I, IV) MP細胞の質的特異性・鑑別マーカーの解明:昨年度までの研究の結果、自己抗原反応性MP細胞と外来抗原特異的メモリー細胞とを区分するマーカーとしてIL-7Ra、Sca1、Bcl2を同定した(Front Immunol 2022)。即ち、MP細胞におけるこれらのマーカー発現はメモリー細胞におけるそれと比較して総じて低い。本知見は、IL-7 - Bcl2シグナルの強弱がMP・メモリー細胞の本質的な差異を規定する可能性を示唆するものであり、現在、Bcl2-transgenicマウスやCD4CreERT2 x Bcl2(flox)マウスを用いて本仮説を検証中である。また、本マーカーを用い、MP細胞自体がいくつかの亜集団(IL-7Ra(lo) Bcl2(lo), IL-7Ra(hi) Bcl2(lo), IL-7Ra(hi) Bcl2(hi))に分類され得ることが明らかになった。本年度はこれらのMP亜集団のさらなる表現型解析や機能解析、TCR配列解析等も行った。 (II) MP細胞の分化・活性化機構の究明:上述のMP亜集団のうち、IL-7Ra(hi) Bcl2(hi) MP細胞に多くのMP1/17細胞が含まれることが判明した。また、特定の分化傾向を呈さない「MP0」細胞の存在についても示唆された。現在、それぞれのMP亜集団を定常状態あるいは免疫不全マウスに移入するなどの手法により、それぞれのMP亜集団の定常的分化機構や自然免疫機能を解析中である。 (III, V) MP細胞による自己免疫疾患発症機構の推究、MP細胞 - 周辺細胞間の相互連関の解明:MP細胞がRag2 KOマウスやFoxp3-DTRマウス体内でIL-12/23依存的にMP1/17へと分化し全身炎症を惹起しうる可能性を見出した。現在、MP細胞の分化・活性化におけるDC、Treg等の役割を解明中である。
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今後の研究の推進方策 |
(I, IV) MP細胞の質的特異性の解明、MP細胞を特定しうるマーカーの同定:IL-7Ra、Bcl2により定義されるMP 3分画のさらなる解析を通じ、これらのサブセットとMP0, MP1, MP17などとの関係性を解明するとともに、MP0の特性(TCR配列、特異的細胞表面マーカー、転写因子など)を明らかにする。 (II) MP細胞の分化・活性化機構の究明:MP0, MP1, MP17を定常状態マウスやリンパ球減少状態マウスに移入するなどにより、これらの細胞分画の分化能、安定性、可塑性を明らかにするとともにその分子メカニズムを探求する。 (III, V) MP細胞による自己免疫疾患発症機構の推究、MP細胞-周辺細胞間の相互連関の解明:Rag2 KOマウスやFoxp3-DTRマウス体内におけるMP0, MP1, MP17の挙動を引き続き解析することで、MP細胞ホメオスタシスにおけるMP、Treg、DCの三者間相互作用の役割を究明する予定である。
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