研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
胸部X線写真には循環器に関する情報が豊富に含まれているが、その評価法は従来、医師による定性的な読影のみであった。研究代表者は基課題において胸部X線写真から肺体血流比を定量的に予測する人工知能を開発し、胸部X線写真には医師が認識していない膨大な情報が眠っている可能性があることを示した(Toba et al. JAMA Cardiology. 2020)。本国際共同研究では、胸部X線写真から血行動態を定量的に評価する人工知能を様々な血行動態指標へ応用し、その臨床応用を目指す。
胸部X線写真から血行動態指標を定量的に予測する人工知能の性能向上のため、公開大規模データセットを用いた事前学習を経たグレースケール画像専用の人工知能モデルを開発し、その性能を既存の人工知能モデルと比較した。比較には小児の肺炎診断に関する公開データセットを使用した。学習時間と診断能いずれにおいても、新規に開発した人工知能モデルにおいて、既存のモデルと比較して改善を認めた。さらにボストン小児病院のデータを用いて、フォンタン型手術術前患者における胸部X線写真からの肺血管の状態の予測を行い、人工知能により定量的な予測が可能であることを示した。
本研究の成果により、胸部X線写真から血行動態指標を定量評価するための高性能な人工知能の基盤モデルが得られた。本モデルを応用することで、胸部X線写真からの低侵襲かつ安価な血行動態指標評価手法の開発が加速し、循環器診療における新たな検査手法の確立が期待される。また胸部X線写真からFontan型手術の予後を予測することが可能となり、今後より正確な手術適応の判断が可能になり、先天性心疾患手術の治療成績が向上することが期待される。
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循環器内科
巻: 91 ページ: 434-439