研究課題/領域番号 |
20KK0380
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
森 聡生 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (60782878)
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研究期間 (年度) |
2021 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 神経変性疾患 / パーキンソン病 / シナプス機能 / α-シヌクレイン / エキソサイトーシス / 脂質代謝破綻 / 疾患修飾治療 / エクソサイトーシス / GBA / グルコシルセラミド / 脂質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
脳は脂質が豊富である臓器であり,生理的神経活動において脂質が重要な役割を果たしている.一方で神経疾患において,脂質異常がどのように寄与しているかは多くのことが解明されていない.これはタンパク質の機能解析に比べて,脂質測定に質量分析法を必要とするなど解析の専門性が高いことが理由の一つとして考えられる.しかしながら基課題では,微量サンプルの脂質定量分析に成功している大きな優位性がある.さらにここに新しくシナプス機能を解析するためにUCSF・Edwards研究室と共同研究を行うことにより,脂質からの視点でPDをはじめとした神経変性疾患の病態解明と疾患修飾治療法と予防法を行う新しいアプローチである
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研究実績の概要 |
本研究はパーキンソン病(PD)の新たな病態解明のために,脂質異常に注目している.我々のパーキンソン病関連遺伝子改変マウスでは,本年度までにシナプス小胞の脂質異常をLC-MSを使った解析で確認している.また神経細胞脱落を起こす前に,シナプス小胞の放出障害を新たに見出している.α-シヌクレインはPDの主なタンパク質であり,かつシナプス小胞のエンドサイトーシスに関わっていると推測されているが生理学的な詳細な機能は不明である.本モデルでは,シナプス小胞の脂質構成異常により神経終末でのα-シヌクレインが挙動が変化することが明らかになった.α-シヌクレインをコードするSNCA遺伝子の病的変異ではシナプス小胞への結合能が変化することが示唆されているため,本モデルでもシナプス小胞の脂質が変化することでα-シヌクレインの結合能が変化すると考える.つまり,SNCA遺伝子に変異がない,孤発性PDでもシナプス小胞の脂質構成変化によりα-シヌクレインの局在変化を通してシナプス放出機能の障害を起こし,神経変性を起こすと考える. さらにはα-シヌクレインの生理的機能を解析するために,他のシナプス小胞関連タンパク質のノックアウトマウスと掛け合わせ,シナプス小胞放出の観察を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PD関連遺伝子改変マウス由来海馬一次ニューロンで,シナプス放出の障害を認め,現在は脳切片での電気生理学的評価を行っている,またマウス脳から抽出したシナプス小胞の脂質解析を終了した.さらにマウス脳から抽出したシナプス小胞とα-シヌクレインが実際に結合変化をするかを確認するためにinvitroの実験系に大きな時間を費やしたが,本年度末に確立することができたのは大きな進展である.
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今後の研究の推進方策 |
長年α-シヌクレインはシナプス小胞との結合の変化が,病的機能のみならず,生理的機能の調整に関わると推測されている.しかしながら,実際のシナプス小胞を使った実験系はなく,人工的なリポソームの実験系が中心であった.本年度中に確立した実験系を使うことで,シナプス小胞の脂質改変によりα-シヌクレインの結合能の変化がシナプス小胞放出機能に影響をすることを示す.またこの神経変性が起こる初期段階で治療介入をできれば,疾患修飾治療につながると考える.同時に,生理的なα-シヌクレインの機能は不明であることから,他のシナプス小胞関連タンパク質との相互作用にも注目して生理的機能を明らかにすることを目指す.
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