研究課題
新学術領域研究(研究課題提案型)
自然免疫はほとんどすべての多細胞生物が有する免疫系である。細胞内寄生細菌は宿主の細胞に侵入することで、宿主の体液性自然免疫応答から逃れるが、宿主はこれに対しオートファジーにより対抗する。オートファジーは細胞内のタンパク質等の代謝回転に機能するときは非特異的な分解系であるが、病原体排除には病原体認識分子による認識依存的に、菌の周辺に空間的に限局されて誘導される。このオートファジーの誘導機構とその空間的制御は、宿主細胞にとって不要な分解を避け、病原体を効率よく排除するために重要である。我々はこれまでに、ショウジョウバエをモデル生物として、細胞内寄生細菌であるリステリア菌の感染に応じて、病原体認識分子であるPGRP-LEによる菌の認識依存的に菌の周辺にオートファジーが誘導されることを明らかにしてきた。本研究では、その空間的制御を解明する目的で、まず、オートファジー誘導シグナルの解明を行った。近年、ほ乳類細胞においては、ユビキチン結合ドメインと、オートファジー関連因子であるAtg8(LC3)結合ドメインを有するp62が細胞内寄生細菌周辺に存在するユビキチンと共局在し、オートファゴゾーム膜とのアダプターとして機能することが示されている。本研究では、ショウジョウバエp62ホモログであるRef(2)Pが細胞内に侵入したリステリア菌の周囲に認識分子PGRP-LEと共に局在し、リステリア菌の細胞内増殖抑制に必要であることを見いだした。さらに、ref(2)がRNAウイルスであるDrosophila C virus (DCV), vesicular stomatitis virus (VSV)に対する個体としての抵抗性に必須であることを示した。VSV感染はショウジョウバエ細胞においてオートファジーを誘導することが報告されており、これらの結果は異なる病原体の感染に対して異なる認識分子により誘導されるオートファジーにおいて、ref(2)Pが共通のアダプターとして機能していることを示唆している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
J.Biol.Chem.
巻: 285 ページ: 15731-15738
Nature Immunology Vol.10
ページ: 134-135
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~seimei/seimei_original.html