研究課題
基盤研究(A)
本研究は、本邦に患者が多く社会的ニーズの高い遺伝性神経変性疾患で、小脳プルキンエ細胞(PC)変性を特徴とする脊髄小脳失調症6型(SCA6)と同31型(SCA31)について、病態発症メカニズムに基づいた治療薬開発を目指して、主にモデル培養細胞および動物を用いた基礎的研究を行なった。SCA6については、病因となる変異Cav2. 1チャネル蛋白のカルボキシル末端断片が細胞質で凝集する際に毒性が発揮されること。さらにこの際、Brain-derived neurotrophicfactor(BDNF)を含めたCREB関連遺伝子群の発現に変動が生じ、患者PCにおけるBDNFの発現低下がSCA6の病態と関連していることを明らかにした。また、SCA6遺伝子エクソン47領域の選択的スプライシングに着目し、神経毒性を発揮する変異Cav2. 1アイソフォームの発現を抑制しうる因子・薬剤を探索するために、同領域の選択的スプライシングを蛍光でモニターできる新しい神経細胞モデル系を確立した。このモデルは今後の候補因子のハイスループット探索に有用である。SCA31については、患者ゲノムで認められる3種類の異常な繰り返し配列のうち、(TGGAA) nの転写産物(UGGAA) nが神経毒性の主要原因であることを明らかにし、それに基づいて患者脳での病態を模倣するSCA31モデル細胞系を確立した。またドイツおよびフランス人のSCA患者ゲノムとの比較からSCA31が日本人特有の疾患である可能性を示した。以上両疾患とも研究着手前にはなかった治療薬発見への基盤を確立できた。
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